ギガフューエルセル
エルガEV
新たな電動開発実験棟は地上5階建てで、バッテリーやモーター、EVシステム、熱マネなどの開発や評価を担う

 いすゞ自動車は、2030年までに扱い全車種で電動車を設定する目標を持つ。11月29日に「カーボンニュートラル商品・技術方針説明会」を藤沢工場(神奈川県藤沢市)で開いた。中長期のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)方針を説明するとともに、開発中の技術や車両などを公開した。約400億円を投じる新たな開発拠点や、量産を見据えた電動車の実証などを通じ、社会実装を急ぐ。

 説明会では、いすゞが開発を主導する路線バス「エルガEV」や、ホンダと共同開発する「ギガフューエルセル」などの電動車を工場内に設けたコースで走らせた。「ジャパンモビリティショー2023」でも公開したエルガEVは試乗もでき、電気自動車(EV)ならではの滑らかな加速性能や静粛性を体感した。

 大平隆専務執行役員は「外気導入をはじめ、日本ならではのキメ細かい機能を取り入れた。自信をもって、すすめていける」と語り、EVバスで先行する海外メーカーや新興メーカーの追い上げに自信をのぞかせる。

 いすゞは、EVトラックや燃料電池車(FCV)、内燃機関車を各国・地域のニーズに応じて投入するパワートレイン戦略を持つ。カーボンニュートラル戦略部門VP(バイスプレジデント)の古川和成執行役員は「多様な動力源から選択できる『マルチパスウェイ』が必要だ。電力や水素をはじめ、エネルギー政策を横目で見ながらどのような商品が社会の需要性にマッチしているか考えながら商品化していく」と語る。

 説明会では、それぞれの車両に応じたパワートレイン選択の目安も示した。1日当たりの走行距離が100㌔㍍以下の利用が半数を占める小型トラックはEVを有力候補とする。すでに発売している固定式電池の車両に加え、交換式電池を用いた車両の実証も25年度中に始める。充電待ち時間が不要で、稼働率を高められるのが利点だ。

 一方、大型トラックは、1日あたりの航続距離が約400㌔㍍まではEV、400~600㌔㍍まではFCVを設定していく。都市間輸送など長距離走行が多い大型はFCVを中心に展開するが、ミキサー車やダンプなど「地場系」と呼ばれる車両はEV化も視野に入れている。

 電動車の開発では、26年6月に稼働予定の開発実験棟「ジ アース ラボ」が中心的な役割を担う。変速機などの実験に用いていた第1、2実験棟の跡地に建設するもので、バッテリーやモーター、EVシステム、熱マネジメントなど電動車に関する実験や評価を行う。古川執行役員は「バッテリーの特性を自分たちで把握し、手の内化する必要がある。そういったところが今後の競争領域になる」と話す。

 使用条件が過酷で、乗用車ほど量産効果が見込めない商用車の電動化はメーカーにとっても〝難路〟だが、開発競争から降りることは許されない。南真介社長兼COO(最高執行責任者)は「今後は、イノベーションやクリエイティブなことをやっていける会社に変わる必要がある。こういった部分に取り組んでいかないと、中国勢や欧米勢に対抗していけない」とも語る。顧客ニーズや規制強化に伴う受け身の開発から脱皮し、新たな価値を商用車にどう吹き込むか、いすゞの挑戦が始まる。

(織部 泰)