物流取引の監視強化へ
トラックGメンの辞令交付式

 物流業界が抱える「2024年問題」の解決に向けて、国土交通省は21日、適正な取引を阻害する疑いのある荷主企業と元請事業者を監視するための新たな部署「トラック荷主特別対策室」を設置するとともに、業務に携わる「トラックGメン」を任命した。監視体制を拡充することで、トラック事業者の情報収集や荷主企業・元請事業者への是正措置を強化する。トラックドライバーの労働環境や待遇の改善につなげるのが狙いだ。

 政府が6月2日に取りまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」に基づく施策の一つとして実施に乗り出した。トラックドライバーは、他産業と比べて労働時間が長く、低賃金のため担い手が不足している。さらに、働き方改革の一環で、24年4月からトラックドライバーに対する時間外労働の上限規制が適用されることなどに伴い、物流の停滞が懸念される。

 国交省では、こうした課題の解消に向けて貨物自動車運送事業法に基づき、荷主企業・元請事業者への「働きかけ」「要請」「勧告・公表」を実施してきた。しかし、依然として荷主企業などに起因する長時間の荷待ちや、運賃・賃金の不当な据え置きなどが散見される。

 トラックドライバーの労働条件改善には、初荷主企業だけでなく、着荷主企業も含めた荷主企業と元請事業者の理解・協力が欠かせない。その促進とともに、適正な取引を阻害する疑いのある荷主企業などの監視強化も必要だと判断し、新組織を立ち上げた。

 斉藤国交相は18日の閣議後記者会見で、トラックGメン設置を機に「制度の実効性を高めるとともに、関係省庁・産業界と緊密に連携し、トラックドライバーの労働条件改善と取引環境の適正化に向け、一層強力に取り組んでいく」などと意欲を述べた。

 トラック荷主特別対策室では、本省や地方運輸局などで本来の業務と荷主企業・元請事業者への「働きかけ」「要請」などを併任してきた職員82人に、今回緊急増員した80人を加えた162人体制で業務にあたる。21日には国交省でトラックGメンの辞令交付式を行った。鶴田浩久自動車局長が「皆さまの働きにより制度の実効性を高め、ドライバーの労働条件の改善と取引環境の適正化、持続可能な物流の実現に向け、一層強力に取り組んでほしい」と訓示し、斉藤鉄夫国交相が辞令を交付した。

 トラックGメンを代表して、同室長を兼任する小熊弘明自動車局貨物課長は「トラックGメンが一丸となって、その職責を果たすことにより、持続可能な物流の実現を図ることを誓う」と決意表明した。