トラックドライバーの時間外労働が規制される「2024年問題」。日本の二酸化炭素(CO2)排出量の2割弱を占める運輸部門のうち、約4割が貨物車となっており、業界は早急な脱炭素の実現も迫られている。トラック輸送が社会インフラとして欠かせない一方で、これらの課題への対策も求められている。解決策の一つとしてトラック輸送を船舶や鉄道などに転換する「モーダルシフト」の動きが加速している。スズキは31フィートコンテナを新たに導入。国内でトラック輸送が抱える課題の影響が大きい長距離輸送を中心に、鉄道での輸送を拡大していく考えだ。
2024年問題では、ドライバーの時間外労働時間が960時間に定められる。拘束時間も変更されるため、慢性的なドライバー不足に拍車がかかる恐れがある。何らかの対策を行わなければ、ドライバーが足りず、長距離のトラック輸送が従来通りできない可能性がある。小口配送を含めて、輸送量の減少が懸念されている。
こうした背景から、スズキはモーダルシフトの推進を決めた。長距離での部品輸送で鉄道を活用する。新たに導入した大型の31㌳コンテナは、長さ9・4×幅2・2×高さ2・6㍍の大きさで、積載量は約20㌧。大型トラックの輸送量とほぼ同量を運ぶことができる。まずは四輪車用のボルトやバンパーなどの純正部品、カスタム用に使用する用品を積載したコンテナを、スズキ部品センター福岡(福岡県久山町)向けの便で活用する計画だ。
荷出しする浜松市から福岡市までは、片道約950㌔㍍もの距離が離れている。スズキの担当者は「福岡までトラック輸送する場合、一旦広島を経由しなければならない」と話す。ここで、新たなドライバーに交代する必要が出てくる。交代要員を確保する必要があるなど、コスト面などでロスが発生することもトラック輸送の課題だった。
また、鉄道輸送に切り替えれば、脱炭素の効果も期待できる。トラック輸送では、年間245㌧のCO2を排出しているが、鉄道輸送にシフトすれば同48㌧まで抑えられるという。部品工場の大平健工場長は「大型トラックの輸送量とほぼ同じコンテナに丸々入れ替え、鉄道輸送を増やしてCO2を減らす」と、輸送段階での環境負荷の軽減に意欲をみせる。ただ、鉄道輸送は、トラック輸送に比べると時間がかかる傾向にある。しかし、輸送コストは低下する見込みで、脱炭素の効果と合わせ、利点が大きいとみている。
スズキは31㌳コンテナの導入で、鉄道輸送比率を現在の2~3割から将来的に4割程度まで引き上げることも視野に入れる。今後、導入するコンテナ数を増やすなど検討を進めていく考えだ。鉄道輸送に切り替える輸送ルートの選定については、2024年問題やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)などの外的要因の変化に加え、輸送量や距離、頻度を基準に判断していく方針だ。
同社は、すでに国内外で鉄道輸送を活用している。国内では12㌳コンテナで、仙台市や北海道苫小牧の部品センター向けの部品輸送に導入済みだ。海外ではインドとハンガリーにおいて、完成車輸送にも鉄道を活用している。インドでは「国の特色や事情もあり、港から工場まで(鉄道の)レールが敷かれている」(担当者)ことも完成車輸送での活用を後押しした。ただ、国内では輸送効率などを考慮すると、現時点で完成車の輸送に利用する計画はないという。
自動車部品での鉄道輸送の活用は進んでいる。JR貨物によると、21年度の発送実績は年間19万6380㌧。そのうち自動車部品は3万3035㌧で、トップの食糧工業品(3万5005㌧)に次ぐボリュームとなっている。トヨタ自動車では貨物列車の1編成のうち、半数以上の輸送力をブロックで貸し切り、往復輸送する「ブロックトレイン」を活用して部品などを輸送している。
モーダルシフトはこれまで、輸送時間がかかることや機動的に輸送ルートを変更できないことなどが、普及へのハードルの一つとなってきた。生産本部の木俣順吉生産計画部長も「(浜松から)東京など短距離輸送ではトラック輸送の方がスピード、コスト面でメリットが高い」としている。スズキでは距離や地域ごとに最適な輸送を選択していくことで、効果的に物流の課題解決を進めていく考えだ。
(藤原 稔里)