いすゞ自動車は3月7日、小型トラック「エルフ」と中型トラック「フォワード」をフルモデルチェンジして発表した。エルフは同日発売、フォワードは2023年夏頃の発売を予定する。フルモデルチェンジはエルフが17年ぶり、フォワードは16年ぶりとなる。エルフには同社初の量産電気自動車(EV)「エルフEV」を設定した。内外装デザインを全面刷新するとともに、9速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)を設定。国内小型トラック初となる右左折時のプリクラッシュブレーキや、全車速対応のアダプティブクルーズコントロール(ACC)、レーンキープアシストなどを採用するなど、安全性能を大幅に強化した。国内販売目標はエルフシリーズ全体で年間4万台とする。

7代目となる新型エルフは、「プレジャー・トゥ・キャリー」をコンセプトに内外装を一新。先進性とタフさ、機能性と華やかさの両立を目指した。先進性を表現した外観デザインのほか、内装はドライバーの多様化を意識したニュートラルな色味や素材を用いた。メーターパネルには7インチのディスプレーを採用した。キャブ空間を拡大したほか、ステアリングの小径化やペダル位置の最適化などで運転しやすいドライビングポジションを追求。アームレストやシートヒーターも採用し、ドライバーの労働環境の改善を図った。

パワートレインでは、5速および6速マニュアルトランスミッションに加えて、新開発の9速DCT「ISIM(アイシム)」を採用した。デュアルクラッチ構造とすることで、素早いシフトチェンジを実現するとともに、変速時のトルク抜けやシフトショックを低減し、運転しやすさや快適性を高めた。多段化によりエンジン回転数を抑制し、静粛性と低燃費も両立。キャブの空力改善や低燃費タイヤの採用により、2トン積9速DCT搭載車(アイドリングストップ付き)で、「2025年度燃費基準+15%達成」を実現した。

新型エルフでは安全性能の向上にも注力しており、ステレオカメラの性能向上に加えて近距離ミリ波レーダーやドライバーモニターを追加。これにより、右左折時に歩行者との衝突回避に貢献するプリクラッシュブレーキや、ドライバー異常時対応システム、ACC、レーンキープアシストを国内小型トラックとして初めて搭載した。さらに標識連動型スピードリミッターやフロントブラインドスポットモニター、可変配光型LEDヘッドランプなども国内小型トラック初採用の装備となる。ドライバーモニターでは、前方への注意不足を検知して警告するとともに、眠気を検知した際はエアコンを制御して冷風を作動させる機能も用意した。これらの安全装備は「ベーシック」「スタンダード」「アドバンス」「プレミアム」の4種類のパックオプションとして設定し、運行形態に合わせて選択できる仕組みとした。

新たに設定したEVは、20kWhのコンパクトなバッテリーパックを新たに開発し、車格や用途に応じて2パック(40kWh)から5パック(100kWh)を搭載するモジュール方式を採用。キャブサイズやホイールベースなどの組み合わせにより、車両総重量(GVW)3.5トン未満から7.5トン車まで幅広いラインアップを用意した。普通充電と急速充電に対応し、専用機器をつなぐことで外部給電も可能とした。

2024年度中には、塵芥車や高所作業車など特装架装向けシャシーと、荷室への移動が可能なウォークスルーバン「エルフEVアーバントランスポーター」も展開する。