ウラジオストクの港には立体駐車場に日本車が保管されている
30年以上にわたる輸入を通じて、日本車に絶大な信頼感を持つ

 日本からロシアへの中古車輸出台数が増加している。ウクライナ侵攻による自動車メーカーのロシアからの撤退や輸出停止により、新車販売台数が激減、中古車需要が急増した。これまで30年以上にわたり日本の中古車を受け入れてきたロシアは、日本製中古車の品質と性能に絶大な信頼を寄せており、新車不足を日本の中古車が補う状況が続いている。一方、ウクライナをめぐる動向は先行き不透明で、ロシアへの中古車輸出がいつまで現状のまま続くのか、見通せないのが実情だ。

 日本からの中古車輸出台数の仕向け地としてトップのロシア。2月のウクライナ侵攻後は、経済制裁やルーブル安、運搬船不足などの影響で3月から5月の日本からの輸入中古車は減少した。しかし、6月以降は円安とルーブル高を背景に日本からの中古車輸入は再び増加に転じ、8月には2万台超に回復した。背景にあるのは新車不足だ。中古車輸出に詳しいNPO法人自動車流通市場研究所の中尾聡理事長は「新車販売台数のマイナス分を日本の中古車で補おうとしている」と指摘する。日本の中古車流通は、中古車オークション(AA)により、中古車の修復歴や走行距離、車両状態が管理されており、輸出するバイヤーも安心して仕入れが可能となる。中尾理事長は「ロシアの車需要を補うのは日本の高年式中古車しかない」。日本中古車輸出業協同組合の佐藤博理事長も「欧州から車が入らないので、日本から買わなければならない」と口をそろえる。

 佐藤理事長が経営する山銀通商のロマン・グルシャクさん(ウラジオストク出身)は「故障がない日本の中古車には安心感がある」とロシア国民の声を代弁する。山銀通商には、バイヤーからの注文が途切れない。ロシア人のバイヤーもAAの開催に合わせて出品車両を検索し、相場と照らし合わせてオーダーを入れる。「注文は新車から5年以内が中心、古くても7年以内で、メーカーはトヨタ自動車がナンバーワン」(グルシャクさん)と語る。中でも、「カローラ」「C―HR」「ランドクルーザープラド」などに人気が集まる。しかし、AAでの競合が多く「今は10台の注文のうち1台買えたら良いという日もある」(グルシャクさん)と市場の活況を肌で感じている。

 ロシア向け輸出車の平均単価は「ウクライナ侵攻前は100万円だったのが、今は200万円に増えた」(佐藤理事長)という。こうした状況で、佐藤理事長は、「ほとんどの国で日本のAAはインターネットで見られており、私たちはバイヤーの〝代行屋〟だ。手数料は定額で、売り上げは上がっても利益は変わらない」と輸出台数が増えても経営にはプラスに働いていないという。

 急増するロシアの日本車需要により、ウラジオストクへの玄関口の富山県の港は出航を待つ日本車であふれている。ロシア政府の9月の部分動員令の影響も短期間で終息した。激化する戦闘とは無縁のように、ウラジオストクでは日本からの輸入中古車の受け入れ能力を高めようとしている。中尾理事長は「これから増えることを見越して拡張している」という。

 日本製以外の中古車の需要はロシアにあるのか。中尾理事長は「中国からの新車は受け入れるが、中国の中古車はロシアでは需要がない」のが現状。当面、日本からの中古車がロシアのクルマ社会を支える構図は変わらないようだ。

(秋田 憲作)