日産自動車とルノーが資本関係を見直そうとしている。ルノーが設立する電気自動車(EV)の新会社に日産が出資を検討する一方、日産は現在約43%ある出資比率の引き下げをルノーに要請している。日産にとって長年の課題だったルノーとの偏った資本関係が見直しに向けて一気に動き始めた背景には何があるのか。

 日産とルノーは10日、「アライアンスの持続可能な運営やガバナンスの実現に向けて継続的に構造的な改善に取り組む」と共同声明を発表した。日産はEV新会社への出資を検討する一方、日産とルノーの出資比率の見直しに向けた協議を進める。仏紙レゼコーによると、ルノーが43%を所有する日産株の一部を売却し、ルノーに対する日産の出資比率である15%まで引き下げる可能性があるという。

 日産とルノーの資本関係が始まったのは、当時、経営危機に陥っていた日産を救済するため、ルノーが出資した1999年。カルロス・ゴーン氏の強力なリーダーシップのもと、経営再建策「リバイバルプラン」を推進した結果、「売上高営業利益率4・5%以上」などの数値目標を当初予定の2002年度から1年前倒しで達成し「V字回復」を果たした。

 ただ、再建後は次第に資本関係による負の側面も指摘されるようになった。現在、日産は約400万台を世界で販売し、ルノーの約260万台(21年実績)を大きく上回る。一方で、互いの出資比率はルノーが43%を所有する日産の筆頭株主であるのに対し、日産は15%しか保有しておらず、ルノーに対する議決権がない。こうした状況の中で日産は「自主性がアライアンスの成長の源泉だ」(当時の西川廣人社長)などと、かねてルノーに対して不平等な出資バランスの解消を訴えかけてきた。

 一方、日産の思いとは裏腹に仏政府が出資するルノー側は日産への介入を強めようと19年にルノーと日産の経営統合を画策。最終的に日産や日本政府が猛反発し、経営統合案は立ち消えとなった。

 このように、こう着していた互いの関係がなぜ今、大きく動き始めたのか。理由は欧州を中心とする世界的なEVシフトにほかならない。

 欧州では35年までに新車販売の全てをゼロエミッション車に限定する法案が可決。既存技術を引きずっていては投資マネーを呼び込めないこともあり、ルノーと競合するフォルクスワーゲングループやメルセデス・ベンツなど各社がEVシフトを強力に推進する。ルノーもEVの新会社を設立し、30年までに欧州の新車販売を全てEVに切り替える方針だ。

 ただ、新会社でEV事業を拡大していくためには開発や生産にかかる膨大な投資費用をねん出する必要がある。新会社では上場による資金調達も検討しているが、日産にも出資を募り、資金を確保する。その見返りに日産への出資比率を引き下げるというのが今回の交渉の構図だ。

 念願であった資本関係見直しの道筋が見えつつある日産だが、懸念材料もある。仮に日産への出資比率が引き下げられたとしても、両社が結ぶ「改訂アライアンス基本契約」(RAMA)の内容によっては、新会社の出資に関わる条件が日産に不利に働き、結果的に不平等である関係は変わらない。日産の内田誠社長は「(新会社への参画で)日産が強くなれるか、慎重に議論していく」という。新たな資本関係を構築した先に日産には何が残るのか、日産の未来を占う交渉が続く。

(永田剛久、水鳥友哉、平野淳)