トヨタのサンクトペテルブルク工場

 日本の自動車メーカーがロシア事業から撤退する動きが表れ始めた。トヨタ自動車が現地での生産と新車販売の終了を決定したのに続き、合弁工場を持つマツダも事業撤退に向けた協議を始めた。ロシアに拠点を持つ他の日本メーカーは当面は現状維持の方針だが、「撤退を視野に入れて検討している」(いすゞ自動車)など、今後は事業撤退が他社にも広がる可能性がある。

 ロシアのウクライナ侵攻に対する経済制裁により部品調達が困難になったため、ロシアに進出する日本メーカー各社は3月以降に稼働を停止している。停戦のめどが立たず、状況が深刻化する中で、トヨタが日本の自動車メーカーとして最初に事業撤退の経営判断を下した。

 トヨタは3月にサンクトぺテルブルク工場の生産を停止して以降も従業員に給与を支払っていた。経済制裁で換金が困難となり、現金が減少する中で従業員への十分な支援ができなくなる可能性を踏まえ、このタイミングでの撤退を決めた。

 マツダは露ソラーズと合弁のウラジオストク工場について、撤退に向けて協議中であることを明らかにした。3月から生産を停止していたが、ロシア事業の見直しを決めた。ロシアでの2021年の販売台数は2万9177台で、欧州全体では15%を占める。

 いすゞは、ウリヤノフスクにある双日との共同出資会社のいすゞルスでの生産を停止しているが、撤退を視野に入れた検討を始めた。

 他社は現状維持の方針を変えておらず、当面は生産停止を継続する考えだ。

 サンクトペテルブルク工場の稼働停止を当初の9月末から12月末までに延長した日産自動車は「現時点で方針に変わりはない」(広報部)としている。

 三菱自動車はカルーガ州にあるステランティスとの合弁工場の稼働を4月に停止したが、「現在も停止が続いている」(広報部)という。

 一方、日野自動車は19年から現地での生産に向けて工場の建設を進めていたが、中止したことを今年9月に入り明らかにしている。ロシアのウクライナ侵攻や一連の不正問題とは関係ないという。

 ロシアではプーチン政権が予備役兵の部分的動員を発令するなど戦況は深刻化を極めている。現時点で明確な方針を示したのはトヨタだけだが、今後の状況次第では日本メーカーによるロシア事業撤退の動きが広がる可能性がある。