新工場で量産を開始した「CX-50」。マツダが米国で新たな一歩を踏み出した

 2022年1月18日、マツダが米国で新たな歴史を刻んだ。トヨタ自動車と共同出資でアラバマ州ハンツビル市に建設した新工場「マツダ・トヨタ・マニュファクチャリングUSA」(MTMUS)で、新型クロスオーバーSUV「CX―50」の量産を開始した。米国生産の撤退から10年。最重要市場と位置付ける米国でマツダが新たな成長への一歩を踏み出した。

 マツダは米国を「販売台数と収益の両面から最大に貢献する市場」(青山裕大取締役専務執行役員)と位置付ける。22年3月期はグローバル販売台数が前期比4%減の124万台と落ち込む中、米国は同9%増の32万2千台と伸長する見通し。世界的な半導体不足などの影響を受けながらも、「CX―5」や「CX―9」「CX―30」などのSUVが好調を維持し、2年連続の増加を達成する見込みだ。

 マツダの屋台骨を支える米国の好調は、16年から開始したブランド価値経営に基づく販売網改革によるところが大きい。値引き販売から脱却し、顧客体験価値に重点を置いて、利益やブランドの継続的な向上を図る取り組みを推進してきた。

 質の高いサービスや体験を提供する黒色を基調とした新世代店舗は200拠点以上に増え、CX―5など既存車種の商品力は依然強い。マツダブランドに対する信頼性調査の評価も高く、毛籠勝弘取締役専務執行役員は「お客さまのパーセプション(認識)もずい分と変わった」と手応えをつかむ。

 半導体不足に伴う生産調整で供給に制限を受ける中で、北米事業を統括するマツダノースアメリカンオペレーションズ(MNAO)が全ディーラーの在庫状況を見ながら車両の優先的な配分を調整するとともに、リーンな在庫で回転率を上げる販売効率化に取り組んだことも好業績につながっている。

 米国ではスモール商品群のCX―50の発売を間近に控える。新型車はオフロードでの高い走行安定性や長尺物を積める荷室、パノラマサンルーフの採用など、米国のライフスタイルやユーザーニーズを取り込んだ。「CX―5でカバーしきれなかったお客さまにもアピールできる。性格の異なるSUVを2台持てることは非常に力強い」(青山取締役)と、CX―5の台数を維持しながらCX―50で上乗せを狙う。

 22年から23年にかけては、マツダ初の後輪駆動(FR)、縦置きエンジンのレイアウトを採用したラージ商品群の2車種を北米向けに順次投入する。ワイドボディーの2列シート「CX―70」と3列シート「CX―90」をラインアップし、既納客の上級移行の受け皿になるだけでなく新規客の獲得も目指す。

 ラージ商品群は日本や欧州向けの「CX―60」「CX―80」を含めて4車種で構成するが、各国の環境規制やユーザーニーズに合わせて、さまざまな電動化のパワートレインを用意する方針。ハイパワーが求められる北米では直列6気筒ガソリンエンジンに加え、プラグインハイブリッドを展開する予定だ。

 足元の業績は好調な米国だが、ブランド価値経営への転換前は販売網が弱体化し、台数が伸び悩んでいた。販売網改革の断行には苦労も伴ったが、信頼できるパートナーと質の高いビジネスを進める方針を貫いたことが実を結んでいる。新型SUVの投入を機に本格的成長のステージに移行するマツダの米国戦略を追う。