現在のマレリ本社

 自動車部品メーカー大手のマレリホールディングス(HD)が業績不振を理由に取引先金融機関と私的整理の一種である事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)の申請に向けて調整に入ったことが明らかになった。収益力が低い中で、主力納入先である日産自動車の自動車生産台数の減少が業績を直撃、債務超過に陥る可能性もある。自動車部品業界では曙ブレーキ工業、サンデンといった独立系サプライヤーが相次いで事業再生ADRを申請している。自動車産業が大きく変革する中、新規参入も相次いでおり、部品の受注獲得競争は激化している。サプライヤーの生き残りをかけた戦いが早くも始まっている。

 マレリの業績は2018年度の最終損益が103億円の黒字だったが、19年度には84億円の赤字に転落した。会計年度を12月に変更した20年は282億円と、赤字幅が拡大し、21年も数百億円の赤字だったと見られる。

 マレリの業績不振が続いているのは、主に主要納入先である日産が「選択と集中」による経営再建を推進しているためだ。日産の18年度のグローバル生産台数は536万台だったのが、20年暦年では362万台にまで減っている。マレリは日産の完成車工場に自前のサブラインを設けて、車両組み立てラインにモジュール部品を供給するほど、日産との関係が深い。

 日産が半導体不足などで減産すると、マレリの業績を直撃する。それだけではない。人件費の高い国内で、モジュール生産は採算が低く、マレリの前身であるカルソニックカンセイ時代から収益力の低さが経営の課題だった。

 マレリは日産系列から独立後、筆頭株主の米投資ファンドKKRからの支援も得ながら事業体制、財務体質の改善を進めてきた。19年9月には栃木工場と佐野工場1地区、宇都宮工場、山形の操業を停止するなど、生産体制の再編を決めた。コロナ禍で自動車市場が急激に落ち込んだのを受けて20年5月には金融機関から1300億円の増資と借入で財務体質のてこ入れを図った。

 さらに昨年5月には、さいたま市の本社ビルを売却、経費削減や資本効率の向上を図ってきたが、日産をはじめとする自動車メーカーの減産が大きな打撃となり、出血を止められない状況が続いている。

 特に日産はコロナ禍影響による生産計画の修正幅が大きく、他の日産向けを主力とするサプライヤーも影響を受けている。ユニプレスは「得意先の生産水準が前回発表時点の生産情報を大きく下回ったことで、当社グループの生産量も想定から大きく乖離する結果となった」という。

 部品メーカーでは19年1月に曙ブレーキ、20年6月にサンデンが事業再生ADRを申請している。業績悪化の原因はそれぞれ異なるものの、今回のマレリを含めて独立系サプライヤーの苦境が目立つのは、経営危機に陥る前に自動車メーカーから積極的な支援が得られないことも理由の一つと見られる。

 電動化や自動運転などで自動車産業が大きく変化する中、自動車メーカー、サプライヤーともその対応に追われている。異業種の相次ぐ参入も予想され、自動車産業は未曾有の競争環境に置かれることになる。