有馬浩二(ありま・こうじ)社長

 新型コロナウイルスの感染拡大、半導体不足、部品供給網の寸断、原材料価格の高騰、物流ひっ迫…。部品サプライヤーを取り巻く事業環境は厳しい。地球温暖化問題を背景にカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みも待ったなしの状況だ。車両電動化や自動運転技術の進展も加速度的に進む中、自動車部品業界は次なる成長戦略が求められている。2022年、部品サプライヤートップはウィズコロナを生き抜き、アフターコロナでの展開も見据え、反転攻勢に向けた取り組みを加速していく。

 ―昨年は、COP26(国連気候変動枠組み条約第26回締結国会議)の宣言やトヨタ自動車の電気自動車(EV)発表などがあった。電動化への機運は加速したか

 「電動化、EVに関して世界はずいぶん動き始めた。もちろん地域ごとに電動車は変わってくるが、皆が『やろう』という雰囲気になった気がする。また、昨年は電池の調達に関して、電池メーカーや自動車メーカーが取り組んできたことが表に出てきた」

 「トヨタの発表で印象的だったのは、EVも『ファン・トゥ・ドライブ』なクルマに仕上がっていくということ。制御や最適なエネルギーマネジメントの部分ではわれわれもさまざまな技術を持っており、貢献できる領域が増えると考えている」

 ―「巨艦、デンソーがなかなか変わらない」と「リボーン21」を始めた。手応えは

 「コロナ禍前から危機意識があり、コロナ禍のこの機会をいかに生かすかという気持ちになって、経営改革を皆と一緒にやってきた。例えるなら会社には多くの階層があり、そこに沢山の細胞がある。細胞が活性化していれば会社組織も生き生きしているはずだが、どこかで目詰まりを起こして細胞が死んでいるのではないかと。このため、さまざまな視点でコミュニケーションを取ってきた。デンソーを大きな弾み車だとすると、今はそれがようやく軋(きし)み出した。皆が同じ方向を向いて押してくれるようになったという手応えはある。ようやく発射台にまで来たので、今年から数年はジャンプするフェーズになるだろう」

 ―今年度までの中期戦略が終わる。経営の方向性は

 「先が見えない時代にあまり細かい計画を作るのもどうか。今、社内に言っているのは『この計画の前提条件は何だ』『前提条件がどう変わるか議論しよう』ということ。難しいが、これをやらないと次の手が打てない。今、分かっている〝想定外の領域〟をもう少し小さくしていく。そうすると何が来ても柔軟に対応できる」

 ―ソフトウエア事業にも力を入れる

 「ソフトだけではなく、ハードと電子を含めた三位一体がデンソーの競争力だが、ソフトの位置付けが上がっていることは確かで、開発力をいかに付けるかがここ3年くらいの大きな経営課題だ。車の中の情報は割と知っているので、車外のさまざまな情報にアクセスしやすく、かつ車両が混乱しないようにするインターフェースの部分がわれわれの付加価値になると思う」

 ―ソフト事業の売り上げ規模などは

 「ありたい姿はあるが、数字が先行すると崩壊しかねない(笑)。ただ、レイヤー(階層)ごとのアーキテクチャー(構造)をしっかり作り、ここを自動車メーカーにご理解いただいて、先ほどのインターフェースのところをお任せいただきたいと考えている」

 ―農業やスマートシティ、エネルギーなど〝非デンソー領域〟も強化している。1日付で新事業推進室も新設した

 「個々にやっている案件はそのまま走らせるが、これらの案件を整理して、例えばフードバリューチェーンならバーチャルでつないで効果などを検証する。まずは半年をターゲットに事業シナリオを作り、事業化に向けた体制を整えていきたい」

 《記者の目》CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)で順調に売上高や株価を上げるデンソーだが、有馬社長は「やっているのは人だ」と繰り返し、人の価値を磨くことに腐心する。先行きが混とんとする中、ものづくりとともに磨き上げたデンソーパーソンの価値が本領を発揮する時代はむしろこれからだ。(畑野 旬)