ボーイング777(貨物専用機)の荷室(ANA提供)

 海上輸送の混乱で自動車や自動車部品の航空輸送が増えている。EC(電子商取引)市場の活況とコロナ禍の影響で海上コンテナ輸送の需給がひっ迫して運賃が上昇したほか、荷主がブッキングを取れない状態が続いているためだ。航空輸送は電機・電子部品や半導体といった小型で軽量の自動車部品が中心で、大型で重量のかさむ自動車とそのコンポーネントは向かないものの「ほかに選択肢がない状態」(業界関係者)のため利用を迫られている。こうした状況はしばらく続くとの業界各社の見立てが多い。

 コロナ禍を発端に、海上輸送は港湾における混雑や滞船状況の悪化が加速。加えてコンテナ不足に伴い運賃が高騰した。従来、海上輸送に対し航空輸送の費用は10倍程度で推移しており、大きな開きがあった。

 しかし、日本通運で海運事業を担当する安藤恒夫常務理事によると、現状で運賃の開きは「3倍ほどに縮まっている」という。

 海上輸送の混乱の解消に目途が立たない中で、コロナ禍が落ち着きグローバルでカーメーカーの生産が復活し始めた。そこで部品供給の後れを防ぐため「(航空と海上の)運賃差というよりも、(海運の)ブッキングが取れずやむなく(航空輸送に)流れてくる」(日本通運安藤氏)状態という。

 日本通運の航空事業では、特に欧米向け輸出で自動車部品を中心に〝船落ち〟の緊急品が旺盛に動いたとする。北米に工場を持つ自動車メーカーの生産が復活し始めていることから、しばらくは自動車部品における船落ち品の航空輸送が好調に推移する見込みだ。

 ANAホールディングスは国際貨物事業において、それまでは見られなかった「完成車の輸送需要が増えている」とする。ここ1、2年は自動車や自動車部品の貨物輸送が好調に推移。中でも「自動車(の伸び)はダントツ」(ANA)としており、現状では2019年比で車両運送台数が約3・5倍に増えた。少なくとも2022年3月まではこの傾向が続くと見通す。現状の輸送では貨物スペースすべてが埋まっている。旅客機も「人を乗せずに運行している状態」(同)というほど需要がある。また、需要の高まりによる運賃上昇も同社の国際貨物事業の好調を下支えした。

 ただ、航空機で輸送できる貨物量は海上輸送に比べれば圧倒的に少ないのが現状だ。一般的な自動車専用船はフロア数12階のもので最大積載数は約7千台である一方、ANAの貨物専用機「ボーイング777型フレーター」で最大9台の積載数にとどまる。自動車各社のサプライチェーンの正常化にはやはり海上輸送の課題解決が条件となる。