オンライン共同記者会見の様子

トヨタ自動車を主軸とした商用車のアライアンス(企業連合)にスズキとダイハツ工業が軽商用車で合流した。3社が7月21日、オンライン会見を開いて発表した。アライアンスが狙う物流課題の解決に加え、軽のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応にも弾みがつきそうだ。

トヨタが日野自動車、いすゞ自動車と4月に設立した技術企画会社「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(CJPT)」にスズキとダイハツの2社が出資する。出資比率はトヨタが6割、残りの4社が1割ずつとなる。社長はトヨタ出身の中嶋裕樹氏が引き続き務める。

CJPTは、荷主や運送事業者のデータを含めたコネクテッド基盤や、商用車用電動化技術のあり方を詰めている。これまでは中・小型トラックが対象だったが、今後は軽商用車も加わる。「ラストワンマイル」と呼ばれる最終配送を担うことが多い軽商用車まで協業を広げることで、物流の生産性改善を加速させる。中嶋社長は「ジャスト・イン・タイムでトータルのリードタイムが短くなり、倉庫のありようが大幅に変わる可能性もある」と話す。

CJPTは現在、CASE技術を検討する一方、福島県で配送用の燃料電池トラックやコネクテッドシステムを実装する準備も進めている。軽商用車についてもモデル地域を選んで実装し、全国へと広げていく考えだ。中嶋社長は「例えば、東京都のような大都市は地方からモノが集まってくる。生産から消費まで、大動脈から毛細血管までつなぐことを、東京都などの都市を使ってやってみたらどうかと考えている」と語った。

生産財として目的が明確な商用車は、経済合理性さえ確保できればCASE技術の普及が一気に進む可能性がある。オールジャパンの「商用CASE」で物流の生産性向上に貢献しつつ、蓄積したノウハウを乗用車に展開することもトヨタの狙いのひとつだ。ダイハツとスズキも「良いものは乗用車やグローバルに広げていく」(スズキの鈴木俊宏社長)、「商用と乗用で分けたり、違うものになるということはない」(ダイハツの奥平総一郎社長)と話しており、軽自動車全体の競争力を底上げする可能性もありそうだ。