エンジン部品などを製造するパワートレインユニット製造部

 ホンダが経営効率化に向けて選択と集中を加速している。四輪車用エンジンやトランスミッションの部品を製造しているパワートレインユニット製造部(栃木県真岡市)の稼働を2025年中に終了する。年内には英国工場とトルコ工場を閉鎖する予定で、過剰だった生産能力を削減してスリム化する。将来の電動車時代を見据えて、生産体制や内製品目などを見直し、経営課題としている四輪車事業の利益率改善を急ぐ。

 25年の閉鎖を決めたパワトレ製造部は1970年12月に設立した。エンジンバルブの生産からスタートし、クランクシャフトやドライブシャフトなどのエンジンやトランスミッションの部品を生産してホンダのエンジン工場に供給している。ホンダがエンジン部品などを内製しているのは、エンジンに対する強いこだわりを持っていたからだ。

 国内自動車メーカーで四輪車最後発のホンダは、初の量産型小型車となった「H1300」に搭載した空冷エンジンや、達成は不可能とされた米国の「マスキー法」の排ガス規制を世界で初めてクリアした「シビック」に搭載したCVCCエンジンなど、独創的なエンジンを自社開発することで成長してきた。より良いエンジンを開発するため、自動車を量産する直前までエンジンの設計を変更することからエンジン部品を内製することは強みにつながっていた。

 また、創業者である本田宗一郎氏が「できない仕事を外注工場に押し付けない」をモットーにしていたこともあって、エンジン部品や工場で使う工作機械なども自社で開発・製造してきた。

 ホンダはエンジン部品製造工場の閉鎖について、海外生産拠点でパワーユニット部品の現地調達体制が進み、日本からの供給量が縮小していることや、駆動系の構造変化に伴って生産品目が減少していることを理由に挙げる。

 脱炭素社会に向けて、自動車の電動化が加速する中、電気自動車(EV)シフトはグローバルで本格化する見通し。ホンダも40年までに販売する新車をすべてEVと燃料電池車(FCV)とする計画で、内燃機関の開発は将来的に縮小し、エンジン部品を内製しているメリットも段階的に小さくなってくる。

 ホンダは「(電動化の)コア技術領域は自前で取り組む」(倉石誠司副社長)意向で、電動化関連技術の開発を加速するため、今後6年間で5兆円の研究開発費を投じる計画。投資資金を確保するため、「生産の最適化とものづくりの効率化で収益向上を加速」(同)しており、エンジン部品工場の閉鎖もこの一環となる。

 余剰感のある生産能力の削減は着々と進めている。年内に英国工場とトルコ工場を閉鎖、狭山工場も年度内に四輪車の生産を終了、23年度に閉鎖する。インドとメキシコでは2拠点あった四輪車生産拠点を1つに集約した。

 「事業活動の収益体質は確実に良くなっている」(倉石副社長)とするが、2021年3月期の四輪車事業の利益率は前年同期と比べて0・5㌽低い1・0%と低く、依然として大きな経営課題となっている。稼ぐ力を早急に取り戻さなければ、生産品目を電動化を見据えたものに見直したとしても、電動化時代を生き抜くための研究開発資金が不足することになりかねない。

(編集委員 野元政宏)