低燃費タイヤの需要増で競争が激化するSSBR。合成ゴム事業再編で各社さらなる成長を目指す

 化学メーカーがタイヤ原材料である合成ゴム事業の再編を本格化している。SSBR(溶液重合スチレン・ブタジエンゴム)やBR(ブタジエンゴム)などの合成ゴムは、供給量の増大で価格競争が激化している。採算が悪化する中、化学業界の課題になっており、各社の事業で見直しが加速している。

 SSBRはタイヤの転がり抵抗に影響するため、クルマの燃費性能を左右する原料で、低燃費タイヤ市場の拡大とともに、供給量が拡大してきた。今後も、脱炭素社会に向けた取り組みが加速する中、自動車の電動化や低燃費化などを背景に成長が見込まれる。

 化学各社は低燃費タイヤ需要を見込んで、生産能力を増強してきた影響で価格競争が本格化し、SSBRを含む合成ゴム原材料事業の採算が悪化している。一足早く再編に動いたのは住友化学と日本ゼオンで、2016年に両社のSSBR事業を統合し、合弁会社「ZS―エラストマー」を設立。研究開発や販売活動の合理化を図っている。

 BRを手がける宇部興産は、今年10月、合成ゴム事業の分社化を決めた。合成ゴムの製造から50年の節目の年に独立して、採算管理を徹底し収益改善を図る。

 さらに、創業時からのコア事業であるエラストマー事業を手放す決断をしたのはJSRだ。同事業を22年4月をめどに石油元売り大手のENEOS(エネオス)に売却する。JSRのエリック・ジョンソン最高経営責任者(CEO)は、売却の理由について「エラストマー事業を発展させるための最善策」と強調。JSRはSSBRを中心にエラストマー事業を展開しており、17~19年度の中期経営計画では、SSBRで世界トップシェアを目指していた。将来にわたって採算確保が難しい事業を切り離す。不採算事業を買収する側のENEOSは、機能材としてエラストマー材料を手がけており、JSRのノウハウをエラストマー原材料の研究開発に生かし、合成ゴムの競争力強化を図る。

 SSBRを含む合成ゴムは旭化成も手がけている。SSBRの市場環境は厳しいものの「手がけている範囲が狭い」(小堀秀毅社長)ことから、強みのある分野に集中することで採算を確保し、事業を継続する。SSBRの価格競争の激化で、調達する側のタイヤメーカーは「開発力がどこにあるかを厳しく見ている」(旭化成・工藤幸四郎常務執行役員)傾向にあるという。デジタル技術を活用した研究開発で市場ニーズに適した原料を迅速に生み出し、競争力を確保する。

 合成ゴムの需要は安定的に推移しているものの、供給多過によって市場環境は大きく変化する。先行きの見通しが不透明な中、化学各社は採算性を重視して事業の選択と集中を加速している。