宇宙航空研究開発機構(JAXA)と多摩川精機(関重夫社長、長野県飯田市)は、トラック輸送時の振動・搬送物の揺れを低減する「無揺動防振装置」を開発した。時速50㌔㍍で走行しても、荷物の揺れを同30㌔㍍と同程度(3分の1)に抑えられるため、振動に弱い精密機器やバイオ薬品などの輸送効率の向上につながる。JAXAの防振技術に、多摩川精機が持つ振動の激しい場所でカメラのぶれを防止して映像をクリアにする技術「空間安定装置」を組み合わせて実現した。より振動や揺れの大きい航空機にも展開を目指す。

 科学技術振興機構(JST、濵口道成理事長)が支援する開発課題「輸送事業向け無搖動防振装置」の研究成果とする。

 現在、デリケートな搬送物の輸送品質の確保では、ばねやゴム材などの柔軟な防振材で支持した防振器具や特殊な車両が用いられている。その一方で、防振効果の高い柔軟な防振材はそれ自体の「共振」が相互に作用して大きな振動を生んでしまうという弱点があり、従来は経験則によって回避せざるを得なかった。

 その解決に向けてJAXAが開発した「振動絶縁技術」は、柔軟な防振材の共振周波数の相互作用が生まれづらい配置場所を算出し、ばねやゴム材の適切な配置を割り出すもの。そして同技術を活用し、適切な場所にばねやゴム材を配置し調整するだけで、多種多様な搭載物に対応できる「振動アイソレーター」を開発した。

 また、多摩川精機が手掛けてきた空間安定装置は、揺れが生じてもカメラなどの搭載物が一定の姿勢を保つようにする技術。これを無揺動化に応用した。振動を低減できても、車両の傾きや加減速で生じる加速度の影響を低減させることができないため、従来は荷崩れや液体搬送物の「かくはん(かき回すこと)」を防ぐように、走行速度を抑えることで対応していた。

 多摩川精機の同技術を活用することで、車両の加速、旋回、減速に応じて搬送物が適切な姿勢を保てるようにあえて容器を〝傾ける〟ことで、液面などを水平に保つことができるという仕組みだ。同社はこの技術をもとに、車両の傾きや加減速、右左折による搬送物の揺れを低減させる「ジンバル型無揺動装置」を開発した。

 両者の技術を組み合わせて開発した無揺動防振装置は、鉛直方向の加速度(振動)を15㌹以上の実効値でマイナス10 デシベル (3分の1)以上減衰させる。また、水平方向の加速度(振動)を0・1G以下に抑えることに成功した。これは、主に複数の車線がある大型一般国道に該当する「第3種第1級道路」を、大型トラックが時速50㌔㍍で走行した際、搬送物へかかる振動や揺れを同30㌔㍍程度の振動や揺れに低減することに相当する。