繋がるタイヤの市場投入が活発になってきた。住友ゴム工業も、タイヤのモニタリングシステム「TPMS」を今年、事業化する。タイヤに集まるデータはメンテナンスだけでなく、自動車開発にも生かせるとにらむ。山本悟社長は「データを持つことで開発の上流から関わっていける」とし、ビジネスモデルの転換に挑む。(村田 浩子)

 ―2020年は新型コロナウイルスによる影響が大きかった

 「会社としても大きな変化を迫られた。昨年2月に危機管理本部を立ち上げて各地の拠点から情報を集約し、毎週見直しをかけた。コロナ禍で事業部ごとの課題が浮き彫りになり、売り上げが減っても利益を生み出せる体質改善が急務だ。生産は中国、北米がけん引する形で下期から回復。10~12月は国内でも前年同期を上回る水準だ。スタッドレスタイヤの需要増も貢献した」

 ―CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)でタイヤに求められる価値はどう変わっていくと見込むか

 「技術で安全性や環境性能に貢献することはもちろん、タイヤからしか得られないデータの重要性が増すだろう。路面状況など、タイヤでないと把握できないこともある。当社はCASE時代の開発コンセプトとして『スマートタイヤコンセプト』を掲げている。タイヤに従来とは異なる新しい価値を付帯するためだ。すでに製品化も進んでおり、付帯したセンサーでタイヤの内圧を遠隔監視し予知検知に生かすTPMSをフリート向けに今年から提供開始する。将来的にはレベル4以上の高度自動運転での採用も期待できる」

 ―TPMSを始めとする新領域で、いかに実績を積んでいくのか

 「大学や企業との連携は必ず必要になる。マネタイズの点でもサービス体制をまずは構築するべきだろう。TPMSでは群馬大学と実証を重ね、サービス化までこぎつけた。今後は、例えば通信や保険、リースといった企業と連携し、新しいビジネスモデルを探っていく」

 ―アフターサービスはデータを軸にした体系に移行しつつある。完成車メーカーとのビジネスに変化はあるか

 「タイヤから得られるデータの可能性や価値を認識してもらえれば、開発の上流から関わっていくことができる。完成車メーカーの要望や自動車の進化の方向性をしっかりと把握し、そこにわれわれが持つデータがどう貢献できるのかを見極めなければならない。タイヤ自体がセンサーになる『センシングコア』などの開発に取り組んでいく」

 ―昨年末に新たな企業理念体系「Our Philosophy」を策定した

 「全社員のぶれない共通の指針として策定した。今後10年を見据えた時、柱になるのはインテリジェントタイヤとESG経営だ。モノ売りからコト売りへの事業転換の必要性を全社員が共有し、この10年で確立したい」

 〈プロフィル〉やまもと・さとる 1982年に上智大学経済学部卒業後同社入社。2010年執行役員、13年常務執行役員、15年取締役、19年3月から現職。1958年6月生まれ、62歳。埼玉県出身。