TPRは2023年度を最終年度する23中期経営計画の中で、「パワトレ商品のダントツNO.1を追求」「新規事業の積極展開をスピードアップ」など4つの柱を目指す姿として掲げた。自動車産業が100年に1度の大変革期を迎え、電動車が増加する一方で、内燃機関搭載車のピークアウトも見込まれる中、岸雅伸社長は「これからもパワートレイン分野をさらに強化しつつ、同時に、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応を含めた将来に向けて新規事業分野へも注力していく」と意気込む。(水町 友洋)

 ―コロナ禍の影響が続いている

 「第2四半期は中国市場が回復しているが、一方で北米、欧州、東南アジア諸国連合(ASEAN)が大きく落ちる。日本も回復基調にはなく、第2四半期が最も厳しい。今回は、リーマンショック時より厳しそうだ。金融機関ではなく、消費者が委縮している。長引きそうな気がしなくもない」

 ―足元で重要視していることは

 「経営の第1優先は社員の安全確保。それと手元流動性の確保だ。コロナ禍対応としては、国や自治体のガイドラインに沿って手順を決めて実施している。同時に、働き方改革を含めて業務の見直しも進めており、3月には在宅勤務体制を整えた。ただ在宅勤務による効率性や結果、評価など把握しづらい部分もある。個人の業務を見える化していきたい」

 「生産に関しては、当社は早くから世界6極のグローバル体制を整え、現地生産を進めてきた。自然災害に対しても相互補完ができる体制ができている。ただ、原材料など一部集中しているところもあるので、調達先を増やすなどの対応は必要かもしれない。それでもコロナ禍で生産ラインが止まっている状況にはない」

 ―23中計ではシェアはもとより性能もナンバー1を目指す

 「その通りだ。マスは決まっており、右肩上がりはない中ではシェアをいかに上げていくかが重要になる。シェア確保により、交渉力も出てくる。日系メーカーシェアを上げようとプロジェクトを組んで展開しているところだ。機能もコスト競争力もなければシェアナンバー1にはなれない」

 ―機能とコストを両立させるカギは

 「内燃機関領域は、燃費改善のための低フリクション化など技術開発、製品提案を続けていく。ただ、これは今までのエンジン開発の流れ。今後は二酸化炭素(CO2)排出規制が厳しくなり、LCA(ライフサイクルアセスメント)という観点も重要になる。また、熱効率50%を実現するための部品供給も続けていく。将来的には水素にも対応した部品を供給していく必要があるだろう。23中計では地球環境にも取り組んでおり、環境対応製品にも注力していく」

 「価格競争力を高めるためにも、パートナーとの連携を強化する。グローバルでのシェアを上げていくとともに、世界最適生産を強化していきたい」

 ―新規事業の強化策は

 「23中計では、取り組みをさらに加速させるために新事業開発グループを新設した。既存商品の収益から切り離し、固定概念にとらわれず幅広く海外にネットワークを作ることを目指した新事業に特化したグループとし、担当役員も置いた」

 「また新事業を加速させるため、カーボンナノ素材関係への開発投資を強化してきた。23中計期間中に1つでも2つでも実現したい。新規事業についての投資は倍増させる。必要であればM&Aも行う」

 〈プロフィル〉きし・まさのぶ 1976年帝国ピストンリング(当時)入社。技術開発部長、常務兼技術企画室長、取締役専務などを歴任。1953年3月1日生まれ、67歳。