停電時にハイブリッド車(HV)などの電動車から住宅に電力を供給する安価な給電装置をトヨタホームが開発した。9月から新築・リフォーム用として発売する。将来的には新築住宅に標準で組み込む考えだ。

 「クルマde給電」は、車内にAC100㌾(最大1500㍗)のアクセサリーコンセントを備えるHVやプラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)につないで使う。壁面の防水コンセントから安全装置を経由して住宅の分電盤に接続する仕組みだ。電動車両用電力供給システム協議会(EVPOSSA)のV2Hガイドラインに準拠し、安全性を確保した。

 家庭で使うすべての電力をまかなえるわけではないが、停電時に冷蔵庫や照明、電子レンジなどを使うことができる。HVの場合、エンジンを併用すれば、ガソリン満タンで4~5日分の電力をまかなえる。価格は新築の場合、37万4千円(消費税・工事費込み)。リフォームの場合は33万円(消費税込み、工事費別)。トヨタホームのほか、同じグループのミサワホーム、パナソニックホームズで取り扱う計画だ。

 トヨタホームによると、台風や豪雨などで24時間を超える停電に見舞われた住宅は2018年に827万戸、昨年は138万戸あった。昨年秋には台風15号の直撃を受けた千葉県の一部地域で停電が復旧するまでに20日以上かかった事例もあった。クルマde給電は、日ごろから電力を融通し合う一般的なV2H機器と異なり、停電時にだけ使う装置だが、広く普及しているHVでも使え「被災時に避難所へ行かず、在宅で避難できることがポイント」(山根満取締役)という。

 トヨタ自動車は今夏、災害対策として国内で発売するHVに給電機能を標準装備していくと発表した。トヨタホームも住宅側の対応を急ぎ、自然災害が多発する日本で被災後の暮らしを守る考えだ。