国内生産は5月を底に回復に転じている

 自動車メーカーの多くが、期間従業員の募集を再開している。新型コロナウイルスの影響で国内生産が大幅に減る中、各社は期間従業員の募集を停止していたが、国内外の需要回復に伴って生産活動も戻りつつあり、こうした需要に応じて新規募集を再開するメーカーが目立ってきた。ただ、7月も生産調整は続いており、コロナ前の状態に戻るには時間を要しそうだ。

 トヨタ自動車は7月から期間従業員の新規採用を約5カ月ぶりに再開した。「クラウン」などを生産する元町工場(愛知県豊田市)に限定して、数十人程度を採用したもよう。採用人数が限定的なため、同社のホームページでは募集せず、紹介会社を経由して採用を行っているという。今後も生産動向を見据えて追加採用を検討する。

 ホンダは、鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)で採用活動を進めた。現在は、募集していたウェブ面接に対して予定を大幅に上回る応募を受けたことから受付を一時中断しているという。期間従業員の採用については、新型コロナの影響に関係なく、足元の需要状況を踏まえた生産計画に基づいて行うとしている。

 スバルは、コロナ禍の中でも群馬製作所の期間工の募集は止めていなかったが、緊急事態宣言の影響で面接など採用活動は一時休止していた。宣言の解除に合わせ、説明会や面接を再開した。

 日産自動車も栃木工場(栃木県上三川町)や追浜工場(神奈川県横須賀市)も募集を再開した模様だ。スズキも4月末から採用を中止していたが、相良工場(静岡県牧之原市)での新規募集を5月25日から再開した。

 一方、三菱自動車は現在も期間工の募集を再開していないものの、一部拠点は昨年から募集を停止しており、「新型コロナウイルスは関係が無い」(三菱自)としている。マツダも昨年11月から新規募集を行っておらず「短期の生産計画に合わせて募集していく」(マツダ)方針だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大によるサプライチェーンの影響や世界的な需要減を受け、5月の国内生産は前年実績から6割減となった。ただ、5月を底に国内生産は回復基調をみせている。7月の各メーカーの生産計画では、トヨタが当初計画に対し約9割の水準まで戻し、減産規模を大幅に縮小する。「ハリアー」など新型車を生産する工場では休日出勤で増産対応する方針だ。マツダは7月から2直操業を再開し、操業休止日を設けないことで前年生産実績に対して8割まで戻る計画だ。スバルも6月下旬に2直体制に戻した。

 国内の新車市場も6月には落ち込み幅が縮小し回復基調がみられるが、新型車に人気が集中している状態で楽観視はできない状況だ。新型コロナの生産影響はリーマンショックに並ぶインパクトに及ぶ。自動車産業ではリーマン時の「派遣切り」や「雇止め」が社会問題となっただけに、日本自動車工業会ではコロナ禍においても雇用を維持する方針を掲げている。ただ、すそ野の広い自動車産業は、関連就業人口が500万人を超える。自動車メーカーより体力が限られる下請けメーカーの雇用状況は依然厳しく、国内の車両生産の本格的な回復が待たれる。