三井化学がアークとのコラボレーションで、昨年発表した初のコンセプトカー「アワーズ ポッド」

 化学素材メーカー各社が将来の持続的成長に向け、モビリティ領域での事業展開を加速している。三井化学は自動車開発支援会社を完全子会社化。積水化学工業や住友化学は、自動車向けを含む関連分野の売上高を大幅に引き上げる。今期の自動車生産台数は、新型コロナウイルスの影響で減少が確実視されるが、100年に一度の大変革期に直面する自動車産業は、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応が求められている。化学素材メーカー各社は、自動車の技術革新に伴う新たな製品や素材の開発、提供を通じてモビリティ領域の事業拡大と収益力強化を急ぐ。

 三井化学は、自動車開発支援などを手掛けるアーク(小守谷敦社長、大阪市中央区)を8月に完全子会社化する。「すでに進行している金型事業での連携強化や、欧州における事業機会の拡大を進める」(三井化学)のが狙いだ。

 これまでは情報連携や共同プロジェクト、相互拠点の活用などの協業を進めてきた。今後は三井化学の素材開発力とアークの持つ異種材料接合技術を融合することで、生産性や安全性の向上、軽量化、コストダウンにつながる材料を迅速に提供する。

 同社が子会社化を決めた背景にあるのが、CASEの進展だ。変化する顧客ニーズに迅速に対応するため両社の連携体制を強化することにした。

 積水化学は、意欲的な目標を掲げる。自動車や鉄道など移動体を中心とするモビリティ領域の売上高を、2030年に現在の2倍となる4500億~5千億円に増やす。エレクトロニクスと移動体に関連する事業を「イノベーティブモビリティ」と位置付け、同領域を担う高機能プラスチックカンパニーが高付加価値製品の拡販などを進める方針だ。

 モビリティ分野では、ヘッドアップディスプレー向けを中心とする高機能中間膜などを重点拡大製品に据える。また、中長期的な成長分野として「自動運転や航空機への活動に重点を置く」(清水郁輔カンパニープレジデント)方針を掲げている。

 自動車用の次世代電池やディスプレー材などを手掛ける高機能材料分野を増益ドライバーの1つと位置付けるのが住友化学だ。エネルギー機能材料と情報電子化学の両部門を合算した目標値として、2025年までに「コア営業利益」を現在の約8割増となる800億円に引き上げる。

 エネルギー機能材料では、固体型電池など次世代電池部材の開発を強化する。また、第5世代移動通信システム(5G)、モビリティ関連として自動車部材の軽量化につながる「スーパーエンジニアリングプラスチックが核になる」(岩田圭一社長)とする。

 旭化成は、マテリアル領域で注力する自動車分野を継続的に強化する。昨年発表した新中期経営計画では、マテリアル領域での成長戦略の推進役として「モビリティ」を位置付けている。「需要増加が見込まれるリチウムイオン電池用セパレーターなど、次世代自動車向け製品に注力していく」(柴田豊取締役兼副社長執行役員)と意気込む。

 モビリティ向け素材を巡っては、炭素繊維や樹脂が成長領域と見込まれ、自動車領域での採用拡大が確実視されている。帝人は今年、欧州で自動車向け複合成形材料のデザインや設計、プロトタイプ試作などの機能を担うテクニカルセンターをドイツに設立した。自動車産業の「本場」であるドイツで、次世代自動車開発領域でのエンジニアリングサービス力向上による完成車メーカーとの関係強化が狙いだ。自動車の構造材にまで踏み込んだ提案を目指している。

(水町 友洋)