写真は2019年秋に撮影

 ジャパンディスプレイ(JDI)は、2019年度第3四半期に黒字化を達成し、債務超過を脱した。経営再建に向けた資金調達のめどもついたとし、菊岡稔社長兼CEOは今年を「ターンアラウンド元年」と位置付ける。足元は新型コロナウイルス感染拡大による需要減にさらされているが、将来を見据え、車載領域で次世代製品の開発を急ぐ。

(村田 浩子)

 ―出資予定者の離脱や不適切会計の発覚など、2019年は混迷を極めた。業績も厳しい状況が続いた

 「昨年は資金調達の面や不適切会計で、顧客や株主にご心配をおかけした。いちごアセットマネジメントから資金調達のめどをつけ、資金繰りを正常化させたことで事業基盤は回復しつつある。19年度は第3四半期で黒字を確保した。最悪の時期は脱したと考えている。新型コロナで難しい局面にあるが、21年3月期で通期黒字化の目標も引き続き目指したい」

 ―事業基盤を整えた次の戦略は

 「今までは規模や数字を追いかけていたが、今後は当社の強みを生かせる領域に集中したい。また、製品単品で提供するのではなく、複数の製品を一体化することで付加価値をつけていきたい。車載領域はこの点に適した事業だ」

 ―車載領域の方針は

 「研究開発(R&D)の幅が広がったことで、ディスプレー開発をどこまで自社で行うかの方針がティア1サプライヤーでも分かれてきた。我々が協業できる領域を模索している。自動運転など先進技術の登場で車室空間の重要性は高まっており、当社としては、今まで以上にデザイン性を重視した製品開発に比重を置いている」

 ―具体的には

 「大型化、曲面化は戦略の軸になるだろう。操作性の向上やセキュリティー対策として、ディスプレーやロータリーノブに指紋センサーを組み合わせた提案も始めている。2022年頃に製品化を目指したい。また今回のコロナ禍により、非接触で操作できるデバイスなども需要が出てくるのでは。中国や北米市場に焦点を当て、まずはハイエンドモデル向けに提案を進める」

 ―新型コロナの業績への影響は

 「中国の都市封鎖(ロックダウン)による生産調整の影響は19年度第4四半期でほぼ終わった。(後工程などの)中国依存リスクはあったが、ある程度はコントロールできた。国内はサプライチェーン(供給網)の寸断は無かった。当初は顧客が在庫確保に動いたことで引き合いは減らなかったが、足元(5月中旬)では2割ほどの影響が出ている。今後、冷え込んだ市場がいつ回復するかが不透明だが、当面は当社の経営が揺らぐ心配はない」

 ―コロナ禍を受けてサプライチェーンの見直しなどは検討しているか

 「現時点では考えていない。コロナ禍が多拠点戦略を考える契機にはなったが、顧客の要望が第一だ。ただ、中国や台湾に置く後工程の組み立て工場は、コロナ禍の影響を受けたため、コストとリスクを見ながら今後の方針を決めたい。例えば、多拠点化や日本の生産工場の余剰部分の活用などが可能性として考えられる。足元ではなく、アフターコロナを見据えて方針を決める」

 〈プロフィル〉きくおか・みのる 1986年東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)入社。メリルリンチ証券や日東電工などを経て、2014年日本電産常務執行役員。17年にJDI入社、19年5月同社常務執行役員CFO、同年9月から現職。1962年9月生まれ、57歳。