全車種併売化は企業力や店舗力がますます問われる競争時代への突入を意味する(写真は2018年6月に全国7会場同時開催されたイベントのザ・コネクティッド・デイ。新型クラウンと新型車カローラ―スポーツが発表された)

 トヨタ自動車系販社の全車種併売が5月8日から正式にスタートする。70年以上の歴史を持つ筆頭格のトヨタ店、「コロナ」や「マークⅡ」といった中型車のトヨペット店、パブリカ店として営業を始め、モータリゼーション(自動車の大衆化)を支えたカローラ店、ビスタ店と統合され、若々しいイメージで新たな顧客を狙うネッツ店―こうしたチャンネルごとの特徴や文化が薄れ、国内販社が横一線に並ぶ新たな時代が幕を開ける。登録車(排気量660cc超)市場で5割に迫る国内シェアを握り「トヨタの敵はトヨタ」とされる系列販社の今を探った。

 「長年培ってきたノウハウや企業文化はそう簡単に真似できるものではない」―トヨタ店の象徴ともいえる「クラウン」の併売について、札幌トヨタの中島好美社長はこう語る。もちろん、不安がないわけではない。それでも地元でトヨタの看板を背負い、政財界や富裕層との間で築き上げてきた信頼関係は「一朝一夕で築けるものではない」との自負がある。

 実際、トヨタ店以外がクラウンの販売を伸ばすのはそう簡単ではないようだ。1年前に取り扱いを始めたネッツトヨタ多摩の田村勝彦社長は「クラウンの販売はこの1年で雀の涙ほど。扱い車種が増えたからといって、これまでと違う客層が急に増えたりはしない」と話す。

 一方で、併売後初の新型車「ハリアー」をこれまで専売車として抱えてきたトヨペット店関係者の心中は穏やかではないようだ。上級ミニバン「アルファード」とともにトヨペット店の屋台骨を支えてきたハリアーだが、首都圏のトヨタ店社長は「トヨペットさんには申し訳ないが、われわれも売りたかったクルマなのでスタートダッシュみたいなことになる」と話す。新型ハリアーに期待をかける販社は多く、トヨペット店にしてみれば新規顧客獲得のハードルが上がり、対抗上、値引きも迫られかねない。中国地方のトヨペット店幹部は「従来の活動を見直し、既納客の防衛に本腰を入れる」と、初代から20年以上、扱ってきたプライドで迎え撃つ構えだ。6月にも発売される新型ハリアーの受注動向が注目される。

 併売により、販社の期待と不安が入り混じるのが法人客との取り引きだ。これまでは経営者向けなら「クラウン」やアルファード、営業車なら「カローラ」や「ヴィッツ」、商用車は「プロボックス」や「ハイエース」と、チャンネル間で一定の棲み分けができていた。しかし、扱い車種が同じになれば「管理顧客が使う車はすべて自社で納めたい」というのが本音だろう。

 北海道のあるトヨタ店営業本部長が「クラウンで付き合いのある法人にハイエースやカローラも一括して付き合ってもらえるように営業する」と話せば、関西のカローラ店営業担当役員は「これまでドブ板をめくって顧客を探してきた。全車種販売は千載一遇のチャンスだ」と、コツコツと積み上げた保有母体に利益率の高い上級車を売り込もうと意気込む。

 先行併売で明らかになったこともある。販社にとっては新規顧客を獲得したいところだが、トヨタモビリティ東京(TMT)の片山守社長は「今や9割近くが自社客の代替だ」とした上で「増えた扱い車種を活用し、新規や増車を含めた提案の幅を広げられることが全車種併売の最大のメリットだ」と指摘する。実際、都内で併売がスタートして半年ほどは人気車種が売れたが、ほどなく旧チャンネル車に販売の軸足が移った。併売で新規顧客の獲得に期待する声は多いが、単に扱い車種が増えただけでは足りない〝何か〟がある。トヨタ自動車販売店協会の横田衛理事長(群馬トヨタ社長)は「自動車販売は、思っている以上にストックビジネスなのかもしれない」と漏らす。

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 併売でグループ内の競合が激化すれば本末転倒だが、かと言って守りの営業に徹していれば、成長どころか将来は存続すら脅かされかねない。トヨタの豊田章男社長は「今みたいに市場が減少する時は『地域で』とは言うものの、(販売が)伸びようが下がろうが絶対に失ってはいけないことはお客さんを向いての競争だ」と話す。競争に勝ち残った販社が同業他社もまとめ、地域のモビリティカンパニーとして新車やMaaS(サービスとしてのモビリティ)事業を一手に担う―そんな未来に向け、トヨタ系販社は一歩を踏み出す。