保存状態のあまり良いとは言えない浮世絵が一枚ある。広重の東海道五十三次である。やや左寄りに「白須賀 汐見阪図」(阪は坂)とある。静岡県湖西市の白須賀宿を描いたものだ◆右から左へ大名行列が続く向こう側には穏やかな遠州灘が広がり船の白い帆もいくつか見えている、という構図だ。汐見阪は今では潮見坂と表記する。京から東海道を下って来ると、ここに到って初めて…