日産の中国生産車、その実力は? 「2030年度100万台」実現の鍵に ノウハウを開発短期化に

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  • 2026年9月17日 05:00

中国を重点市場の一つと位置付ける日産自動車。2030年度には輸出分を含めて100万台の販売を目指している。鍵になるのが車両開発の現地化で、「チャイナスピード」で得た知見は世界戦略車の短期開発にも生かされる。変化が極めて激しい中国に日産はどう立ち向かおうとしているのか。中国生産の主力モデルの試乗から、競争力を読み解く。

■コロナ禍後の急変と中国現地化

「スピードとコスト、高度なEVとHV(ハイブリッド車)の技術を生かす。競争の激しい中国事業を強化し、世界的な技術革新と輸出のハブの役割を果たしていく」。日産が4月に開いた「長期ビジョン」説明会で、ギヨーム・カルティエCPO(チーフパフォーマンスオフィサー)は、合弁会社2社と取り組む中国事業の重要性を語った。

中国市場はコロナ禍後、様相が一変した。政府の新エネルギー車(NEV、EVやプラグインハイブリッド車など)に対する投資支援や購入補助金などで民族系の新興メーカーが急激に力をつけた。生産能力は中国全体で約4000万台以上と言われ、東南アジアや欧州、南米などへの輸出を通じて世界的に存在感を高めている。

日産も現地メーカーの台頭に苦しんだ。19年に年間154万台だった中国販売は、24年には70万台弱まで激減。これを受けて日産は、現地合弁会社が車両開発を主導する体制に移行した。東風日産乗用車ではEV「N7」を現地サプライヤーの部品も使いながら、2年あまりで開発を完了させたという。その後もプラグインハイブリッド車(PHV)のセダン「N6」やSUV「NX8」を矢継ぎ早に投入し、「Nシリーズ」として展開を始めている。もう一つの現地合弁会社、鄭州日産でもPHVのピックアップトラック「フロンティアプロ」などを開発し、輸出している。

■快適性と動力性能が共存

N7は約12万元(約280万円)から、NX8も約16万元(約370万円)からと、比亜迪(BYD)や小鵬汽車、広州汽車などのNEVに負けない価格競争力を持つ。実際に試乗してみると「安かろう悪かろう」ではなく、操舵感や路面の凹凸のいなし方など、日本で販売する日産車と特段変わらない印象を受けた。

N7のドアを開くと、大型ディスプレーとシックなデザインの内装が出迎えてくれる。センターコンソールには冷蔵庫も備えている。半面、スポーツモードに切り替えて旋回中にアクセルを乱暴に踏み込むとホイールスピンが発生するなど、十分過ぎる動力性能も併せ持つ。EVならではの快適性と走りの楽しさが共存していると思った。

N7は、ホイールベースがほぼ同一の東風汽車のEVセダン「eπ007」のOEM(相手先ブランドによる生産)供給車と認識されることもあるが、「全く違う車」(東風日産の関口勲総経理)だという。N7の前輪駆動に対し、eπ007は後輪駆動で、電池の搭載位置も異なるという。

NX8は、さらに高級感を求める客層や多人数乗車に適していると感じた。頭部まで包み込むようなシートはマッサージ機能付きで、走行中も背中や腰をもみほぐしてくれる。しっとりとした乗り味で、前走車追従機能をオンにすると十分な車間距離を確保しつつ、操舵支援は積極的なのが印象に残った。

異質だったのが鄭州日産のフロンティアプロだ。加減速こそ静かだが、ステアリングの重さやエンジン始動時のノイズなど、Nシリーズとは一線を画す乗り味だった。速度などが表示されるモニターの背景には山並みが描かれ、電動車だがオフロードも走れる商用車であることを感じさせた。ただ、先進運転支援システム(ADAS)は他モデルと同様、雨天でも白線を認識し、タイトコーナーでも車線中央を走行するなど、「知能化」は抜かりなく進んでいるようだ。

■開発力をグローバルに

日産はグローバル車の開発期間も最短30カ月に短縮することを目指している。ここでも中国のNEV開発で得た学びが一定の役目を果たしているという。製品開発の変革プロジェクト「PCS-T」の旗振り役、同社第一製品開発本部の山口一之執行職は「中国の開発のスピード感やバイタリティーと、品質第一でこだわる(日産側の)姿勢とを上手く融合して、短期化しつつどのように質の高い車をつくるのか、お互い自信になっていると思う」と話す。

特に大きいのが開発ノウハウだ。エンジニアは中国に出向して中国流を学び、帰国後は現場で活躍しつつ後進の育成にも取り組んでいるという。「996」(1日12時間、6日間勤務を表す言葉)といった苛烈な働き方を避ける代わりに、デジタル技術による性能検証などを取り入れ、持続可能なプロセスにしつつ「結果的にほぼ同じスケジュール」(山口執行職)が実現できているという。

■なおも厳しい中国市場

ただ、中国は市場の変化も激しい。今年1~8月の日産の中国新車販売は、前年同期比26.8%減の28万9410台だった。景気の低迷とガソリン価格の高騰の影響で、特に内燃機関車の販売が低迷しているというが、新車効果で右肩上がりだった昨年から様相は一変した。

日産は中国でのNEVラインアップを27年までに計10車種へと拡充する予定だ。さらに東南アジアや中南米への輸出にも力を入れていく。他国でも中国NEVメーカーとの価格勝負になることが想定されるが、イヴァン・エスピノーサ社長は「お客さんを中心に置いて車をつくったことで、N7は驚くほど売れた。中国で競争できるなら、諸外国でも競える」と力を込める。

販売戦略も見直していく。中国を1つ市場と見なすのではなく、5~6の地域に分ける。例えば、東北部には四輪駆動のフレーム車を、上海などではNシリーズなど都市生活者向けの車両を投入することで、個別最適を図っていく。

NEVの開発現地化は、トヨタ自動車も「bZ3X」などで成功し、マツダも「EZ-60」で反転攻勢を目指している。ホンダも現地合弁先との開発に力を入れ、状況打開を図る考えだ。

事業環境が不透明な中、自動車メーカーには市場の変化をつぶさに捉え、新車をタイムリーに投入する力が問われている。自動車産業の変化を象徴する中国で、グローバル競争を勝ち抜く開発力を磨く取り組みが広がりつつある。

(中村 俊甫)

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