自動車メーカーの製造現場で、短期間・単発就労の「スポットワーク」の活用が広がりそうだ。トヨタ自動車は、ライン作業に入るまでの長期の教育期間を前提としないスポットワークの試験導入を一部の工場で開始した。日産自動車は時短勤務で働くことができるサブラインを設けるなど、子育て世代や高齢者が働きやすい環境づくりを始めている。製造ラインの臨時従業員の雇用形態は期間従業員が一般的だが、近年は都市部のアルバイトと賃金差が小さくなり人材確保に苦慮する傾向にある。自動車メーカー各社は、製造ラインの作業を細かく切り分け、多様な人材が即座に作業を行える環境を整えることで潜在労働力の掘り起こしを図る。
トヨタはスポットワークの試験導入に当たり、安全や品質の観点から作業の「技術難易度」と「身体的負担」を細かく分析。スポットワークに向いた作業を抽出し、簡易的な手順書だけで「5分間で作業に着手できる」体制を整えた。
現在は主にラインで組み付ける部品をピッキングする「組み付け準備」をスポットワーク向けの作業として切り出している。将来的にはウエアラブル端末によって作業指示を行うなど、即座に作業ができる体制を整える。
日産も子育て世代や高齢者が働きやすい環境づくりを始めている。日産自動車九州(福岡県苅田町)では、時短勤務で働くサブラインを設け、従業員の確保と車両生産の工程効率化に取り組んでいる。
サブラインでは、「セレナ」などの外装色をツートンに塗り分ける際のマスキング作業などを実施している。日中にマスキングを施し、2直(夜勤)でまとめて塗装することで、効率的な生産を可能にしている。勤務や始業の時間も、通常の8時間から、従業員の子どもの送迎時間などに合わせて柔軟に調整しているという。
スバルも、ハイブリッド車(HV)の基幹部品「トランスアクスル」を生産する北本工場(埼玉県北本市)で女性や高齢者が活躍できる環境を整えている。26年5月現在、女性従業員の割合は全体の約3分の1を占めており、稼働した24年10月時点で目標としていた2割を上回っている。トランスアクスルケースの搬送などはロボットが担うなど、作業負荷の軽減を図っている。
国内の労働人口減少に伴い、自動車生産を支える期間従業員も深刻な人手不足に直面している。トヨタの担当者によると「期間従業員は東京のアルバイトと給料があまり変わらないこともあって半年で半数が退職している」という。長期的には人工知能(AI)を用いてロボットなどを自律的に動かす「フィジカルAI」の活用によって、製造業の人手不足解消に期待がかかる。まずはスポットワーク向けに製造ライン作業を仕分けすることでフルタイム従業員に依存する体制を見直し、将来的に人間とAIが共生する製造現場の在り方を模索する狙いもありそうだ。


















