連載「日産・長期ビジョンを読み解く」(1)商品攻勢 名車復活、ストーリーを語れ

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  • 2026年4月21日 05:00

日産自動車は4月14日、「長期ビジョン」を公表し、経営再建後に目指す方向性を打ち出した。事業環境が刻一刻と変わる中、2期連続の巨額赤字とリストラ策を経て、日産はどんなメーカーを目指していくのか。4つのキーワードから読み解いていく。初回は商品戦略にフォーカスする。

「今こそ、行動を導く指針として明確にするべきだ」。イヴァン・エスピノーサ社長は発表会に集まった約500人を前に、長期ビジョンを社内外に示す重要性を語った。2カ年の経営再建計画「Re:Nissan」は今春、折り返し地点を迎えた。コスト削減による止血段階を経て、日産は持続的に成長することができるのか。戦略の公表を期待する声は日に日に高まっていた。

中核となるのが商品戦略だ。発表会の壇上では、2台の新型車がベールを脱いだ。1つが中型SUV「エクストレイル」(北米名「ローグ」)だ。全面改良は6年ぶりで、今年中にも北米市場に投入する。注目はシリーズハイブリッドシステム「第3世代eパワー」の北米への初投入だ。モーター駆動による滑らかで力強い加速性能や、改良を重ねて磨いた燃費を武器とする。原油高に見舞われる市場へのアピールを強めていく。

もう1台が電気自動車(EV)「ジューク」だ。ポリゴン(多角形)を組み合わせたユニークな造形で、英国工場での生産を予定する。プラットフォームは「リーフ」と共通だが、より個性を求める声に答えた。

■日産の代名詞の投入を予告

さらに2台の名車の復活も、予告画像とともに正式に発表した。

「スカイライン」はプリンス自動車工業(当時)時代から70年近い歴史を持つセダンだ。公開された動画では、エンブレムや「丸目4灯」のテールランプなど、歴代モデルのアイデンティティーを継承していることが示された。27年度にも登場予定だ。

北米向けでは、ラダーフレームのSUV「エクステラ」が28年後半に、13年ぶりに復活する。堅牢さと四輪駆動の走破性が特徴の現地生産車として、かつて米国人の心をつかんだ1台だ。「現地でのエクステラのネームバリューは強い。1980年代にピックアップトラックで米国に進出した歴史からも、日産をイメージしやすいクルマだ」(日産幹部)。市場で主流のモノコック車では成し得ない個性に、期待の声は大きい。

日産はラインナップを4つに分類しており、この2台は日産らしさを体現する「ハートビート(胸が高鳴る)モデル」と位置づける。台数や収益性はエクストレイルといった「コアモデル」、市場開拓は新型「エルグランド」といった「グロース(成長)モデル」が担い、欧州や中国などで協業先と生産する「パートナーモデル」で個別のニーズに応える。

経営再建直後のフェーズでは、まずは収益を安定化させるコアモデルが重要だ。それでも日産がハートビートモデルに光を当てる背景には、大きく2つがあると考えられる。

1つは世界市場で競争が激化している点だ。特にアジアや欧州市場では急成長する中国メーカーが存在感を高めている。価格の安さとソフトウエアによる革新性を強みとする新興勢に対し、日本メーカーの武器は何か。日産は歴史と伝統に裏打ちされたブランドや、背後のストーリーに活路を見出している。実際に、新型スカイラインには、レースで連戦連勝を飾った70年代からの意匠を継承する。すでに現行「フェアレディZ」では、米国で70年代から愛される「S30型」や、「デイトナ24時間耐久レース」を制した「Z32型」のオマージュを盛り込んでいる。さらに電動化時代でもこれまで培ってきた日本車への信頼感は根強く、これも追い風に働くとみている。

■柔軟に、ユーザーが求める技術を

もう1つは、不確実性が極めて高い事業環境だ。2021年に公表した長期ビジョンでは、30年までに19のEVを投入し、世界販売に占める電動車比率を55%にする目標を掲げた。一方、今回は「市場は非常に流動的で、具体的な数値は難しい」(エスピノーサ社長)ことから電動化の目標を公表しなかった。足元では米国でトランプ政権が環境規制を緩和し、欧州でも新車販売に占めるEVシェアは19.5%(25年)と発展途上にある。各国では今後さらなる政策変更の可能性もあり、現実路線を取った形だ。

その象徴といえるのが、新型エクステラへのV型6気筒エンジンの搭載とハイブリッドの設定だ。自社の電動化目標の達成のためではなく、あくまで市場ニーズを満たすための戦略を取ることを明確化した。エスピノーサ社長は「競争力のある内燃機関への投資も継続する」とも話す。

日産は今後、世界56モデルを45ヘと絞り込み、低収益モデルからは手を引く。具体的なモデル名は明かさなかったが、収益性や成長の可能性を多角的にみながら、投資に値するかを検討していく。

それでもエスピノーサ社長は、日産の復活への象徴としてハートビートモデルが必要だと強調する。「販売台数が少なくギリギリの収益性でも、強いブランド力があれば存在する意義はある。特定の車種に投資する理由をもっと自分たちに厳しく問う必要がある」。

コロナ禍後、日産の商品ラインアップは刷新が遅れ、主力の北米市場で値引き販売に頼った結果、経営状態は急速に悪化した。商品企画部門出身として、エスピノーサ社長はメリハリをつけた新型車への投資を、成長戦略の“一丁目一番地”に位置づけた。復活を予告された新型車は、これからの日産が向かう道しるべとなる。

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