日産自動車は軽自動車の電気自動車(EV)「サクラ」の一部改良で、EVの価値を改めて市場に問う。標準装備の充実で「実質値下げ」を図ったほか、新たに廉価グレードも設定した。2022年の発売直後は登録車からの乗り替えが多かったものの、近年はガソリン価格の高騰を背景に、軽ユーザーからの移行も増えているという。販売好調なガソリン車「ルークス」とともに、まずは軽から日産の国内市場での存在感を高める狙いもある。
一部改良したサクラは4月16日に受注を始め、今夏に発売する。3グレード展開で、「ニッサンコネクト」ナビを標準装備する最上位グレード「G」は価格を従来から約8万円引き下げ、消費税込み300万円を切った。量販グレード「X」は約260万円の価格を据え置きながらシートヒーターなどを標準装備した。新規設定の「S」は、改良前の外観デザインとすることで原価を下げ、約245万円の設定とした。
従来は2グレード展開で、日産によると「G」が販売全体の3割、「X」が7割の構成だった。「S」グレードの設定で、裾野の拡大が期待される。
■ガソリン車から燃料費が半減
サクラは22年6月に発売し、翌23年には3万7140台を販売して軽乗用EV市場を開拓した。25年の販売台数は1万4093台と、当初の4割以下に減少した。ユーザー傾向も変化し、EVを求めて登録車から乗り替える層から、23年以降は軽ガソリン車からの代替が約6割を占めるようになったという。
背景には近年のガソリン価格の高騰もあるとみられる。資源エネルギー庁によると、ガソリンの全国平均小売価格は22年6月末の174.9円から、25年4月末には184.5円まで上昇。政府は26年1月から、ガソリンの暫定税率廃止で価格を引き下げているものの、足元では中東情勢の緊迫化を受けて急騰した。今後もガソリンの小売価格は高止まりするとみられ、EVには追い風となる可能性もある。
日産の戸井田聡マーケティングマネージャーは「ランニングコストで評価されている。『燃料費が半分になり、数年使うと2桁万円のメリットが出る』と喜ばれている」と、顧客の声を紹介する。
■新型軽「ダブル提案」で販売増へ
軽乗用EV市場にも盛り上がりの兆しが出ている。サクラと兄弟車の三菱自動車「eKクロスEV」に続き、25年にはホンダが「N-ONE e:(エヌワンイー)」を発売。スズキも26年度中の発売を予定する。さらに中国・比亜迪(BYD)の「ラッコ」も今夏、“上陸”を予定している。全国軽自動車協会連合会(赤間俊一会長)によると、25年の軽乗用EV4モデルの販売台数は2万792台で、軽乗用車販売全体の約1.6%にとどまる。まずは市場規模をどこまで拡大できるかが焦点になる。日産は全国の販売網でのメンテナンス体制も強みとする。
国内販売の観点からは、25年9月発表のルークスとともに、反転攻勢に向けた機運を作リ出すことも期待される。日産の25年の国内販売台数(軽を含む)は40万2977台で、半導体不足のあった22年の44万9440台を下回った。ただ、26年2月は1年5カ月ぶりに前年実績を上回り、底を打ったとみられる。戸井田マーケティングマネージャーは「店頭でも(ルークスとの)『ダブル提案』をしてほしいと言っている。軽EVは他社には少ない商材なので、勝率が上がり、トータルで(日産車の販売が)増えることが狙いだ」と話す。
4月14日に公表した長期ビジョンでは、30年度に国内販売を55万台まで伸ばす目標を掲げた。26年は待望の旗艦ミニバン「エルグランド」も発売される。まずは手頃な新型軽で話題を喚起し、今後の目標達成につなげたい考えだ。
(中村 俊甫)





















