中東情勢、自動車業界への影響はバリューチェーン全体に ホルムズ海峡の開放見えず 長期化を見据えた対応必要に

  • 企画・解説・オピニオン, 自動車メーカー
  • 2026年4月14日 05:00

中東情勢の混乱の影響が自動車業界でも多方面に広がっている。米国とイランは日本時間4月8日、2週間の攻撃停止で合意したものの、停戦交渉は決裂。事実上封鎖されているホルムズ海峡の開放への道のりは見えない。ナフサの供給不安から塗装用シンナーなどの価格も急騰している。原材料価格の高騰による価格転嫁を進めてきた自動車業界だが、収益性の悪化は避けられそうにない。 

米国とイランは11日、パキスタンで戦闘終結に向けて協議したものの、合意には至らなかった。イランの核開発などの争点で折り合えなかったと報じられている。トランプ大統領は翌12日、イラン側が事実上封鎖しているホルムズ海峡を米海軍が封鎖すると表明。イランの港へ出入りする船舶を封鎖するなど、解決への道のりは見えていない。現在もペルシャ湾内には、日本が関係する船舶42隻が取り残されたままだ。

混乱する中東情勢のきっかけは2月末、米国とイスラエル軍がイランに攻撃を仕掛けたことに端を発する。その後イラン側が原油や天然ガスの輸送の要衝であるホルムズ海峡を封鎖した結果、世界的に原油価格が上昇。経済産業省によると、日本は原油輸入の94%を中東産に依存し、そのほとんどがホルムズ海峡を通るという。

中東情勢による日本の自動車業界への影響は現状、大きく2つに分けられる。

まずは原油の調達難によるガソリンや原材料価格の上昇だ。政府は10日までに「重要物資の供給に関しては、日本全体として必要となる量は確保できている」と説明。国土交通省はガソリンや軽油の流通過程で「目詰まり」を確認した場合は個別に対応する方針を示す。

ナフサ(粗製ガソリン)由来のプラスチックや合成ゴムへの影響も懸念される。いずれも自動車部品には欠かせない原材料で、価格上昇は避けられない見通し。日本ペイント(榎本朋夫社長、東京都品川区)は3月中旬、シンナーの価格を従来から75%値上げした。

供給量についても不安視されるが、乗用車メーカー各社の生産ラインには13日午前時点で影響は確認されていない。政府は医療用手袋などの供給確保を急いでおり、「エッセンシャルワーカーへの影響が大きいのでは」(自動車メーカー関係者)との声もある。

もう1つが日本からの完成車輸出だ。現地への輸出ルートがまひしていることから、現地で人気のSUVを国内で生産するトヨタ自動車や日産自動車が生産調整しているほか、マツダも5月まで中東向け車両の生産を一時停止。スバルは現地向け出荷を停止している。アフリカ・喜望峰回りで出荷を続ける方法もあるが、航行時間や海上輸送コストの大幅な上昇が見込まれる。

中東情勢の影響はバリューチェーン全体に及ぶため、影響額の試算が極めて難しい。その中で自動車メーカーや部品メーカー各社が今期の決算でどのような見通しを示すかも注目される。自動車大手幹部は「ホルムズ海峡や周辺地域の安全が確保されることを望む。状況を注視していきたい」と話す。これまで原材料価格の高騰を受けて世界規模での価格転嫁で収益を確保してきた自動車業界だが、中東情勢の混乱により状況はさらに苦しくなるのは避けられない情勢で、原価低減活動など経営基盤を強化する施策が一段と重要性を増している。

◆中東情勢と安全保障に詳しい日本大学危機管理学部の福田充教授の話

「米国は(1)イランに核開発をさせない、(2)イラン国内のデモへの武力弾圧を止める、(3)イスラム教シーア派政権からの体制転換、の3点を掲げて攻撃した。2週間の停戦合意は重要な一歩だが、完全終結は困難だろう。イスラエルや武装組織ヒズボラの拠点であるレバノンなどを含めないと幕引きはできず、泥沼化する可能性が高い。トランプ大統領に一貫性はなく、長期化を念頭に入れた対策が日本にも必要になる」

「外務省は『海外安全情報』を発出しているが、経済安全保障ではアラートが存在していない。安全保障リスクが高い地域を指定し、その地域にサプライチェーン(供給網)が依存している場合、国が備えを呼びかける必要もあるのではないか。産業界でも、危機が起こりそうな時には、サプライチェーンをジャスト・イン・タイム型から、一定の在庫を確保し調達ルートも複線化する、レジリエント(回復力のある)な調達を業界ごとに検討する必要がある。コロナ禍やロシア・ウクライナ戦争のように、危機は今後も繰り返されるだろう」

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