〈トップインタビュー2026〉NTN、鵜飼英一社長 軸受けの小型化・軽量化を可能に グローバルでの事業再編も

構造改革による収益力強化を推進中のNTN。生産拠点の再編とともに、自動車の電動化も見据えた製品開発力の強化を図ることで企業価値の向上につなげようとしている。鵜飼英一社長に、思い描く「新生」NTNのイメージについて聞いた。

―2026年度は現行の中期経営計画の最終年度だ。構造改革による収益力強化という命題に対する現時点での評価は

「24年度から3カ年の現計画は、過剰な設備投資による減損処理など『負』の遺産を一掃し生産態勢を最適化する期間と位置付けた。総額で約350億円の構造改革費用を想定し、前倒しで取り組みを進めてきた。経営体力は着実に回復しており、現計画の終わる27年3月期には3期ぶりとなる最終黒字への転換も射程圏内に入った」

―とはいえ、米国や中国などの地政学リスクが強まるなど、予断を許さない状況にある

「米国の追加関税措置による業績への影響は、軽微とみている。製品供給先の企業との交渉で、関税コストを25年度内に9割まで回収できるめどが立った。むしろ懸念するのは中国のレアアース輸出の行方だ。磁石を使った製品には、中国産のレアアースを原材料とするものも少なくないからだ。動向を見定めながら、迅速に対応していく」

―自動車関連事業における26年度の課題は

「キーワードは『長寿命』『小型化』の2つだ。自動車の性能向上による、走行距離の延伸に耐えられる製品の要求が強まってきている。さらに、電動車における部品の小型化や軽量化の要請にも対応できるように、小型ながら遜色ない初期トルクを発揮するための効率的な動力効率の向上が欠かせない。こうした技術の開発と生産態勢をより迅速に確立する基盤構築が、26年度も最大の課題になるだろう」

―構造改革は待ったなしのテーマだ。その具体的なイメージは

「グローバルでの事業所の再編を進めているところだ。国内では、磐田製作所(静岡県磐田市)のボールベアリング生産機能の一部を和歌山製作所(和歌山県橋本市)に移管するほか、台湾メーカーにも生産を委託する。海外では、カナダのボールベアリングやアクスルベアリングなどの生産を26年春に終了。ドイツのアクスルベアリングなどの生産拠点も、26年夏にフランスやルーマニアの拠点に分散させる。アクスルベアリングについては、すでに中国で南京から上海への生産移管が25年春に完了している」

―生産拠点の再編は、将来を見据えた戦略製品の開発機能の構築にもつなげるのか

「磐田製作所では、今後の成長領域として着目する『ブレーキ用ボールねじ』の拠点と位置付けていく。ハイブリッド車(HV)は電動油圧ブレーキで全車輪を一律制御するためボールねじは1本で済むが、電気自動車(EV)は4輪にそれぞれ独立して制御する電気機械ブレーキが使われるため、ボールねじは4本必要になる。EVの本格的な普及に備える」

―EV時代の本格的な到来を視野に、開発を加速する契機になりそうだ

「独自開発した特殊熱処理技術『HA-C』を使った深溝玉軸受製品を、自動車市場などに向けて提案している。軸受の小型・軽量化を可能にする技術であり、EVやHVで採用が広がるeアクスルや、HVおよび内燃機関車向けトランスミッションなどにも幅広く提案。各種車両の省エネルギー化に貢献していく」

〈プロフィル〉うかい・えいいち 関西大学工学部卒業。1980年4月NTN入社。2011年4月執行役員、14年4月常務執行役員、17年6月取締役、21年4月より現職。1957年2月1日生まれ、69歳。兵庫県出身。

(清水 直樹)

関連記事