日本製鉄は12月12日、「2030中長期経営計画」を策定したと発表した。買収したUSスチールやインドなどの海外事業に重点投資して、2030年度に連結実力利益1兆円超を目指す。海外の自動車やエネルギー向け事業の拡大を図る一方で、国内事業は集中生産して効率化を図る。国内の自動車用鋼板は東日本製鉄所の君津、名古屋製鉄所、九州製鉄所・八幡に段階的に集中していく方針。今井正社長兼最高執行責任者(COO)は「中期経営計画を達成して世界ナンバー1鉄鋼メーカーへの復権を果たす」と述べた。
中期経営計画に設定した連結実力利益1兆円以上の内訳は国内、海外ともに5000億円以上。25年度(26年3月期)見通しは国内が5650億円、海外が1150億円であり、海外で収益拡大を目指すことになる。
国内は、現行の経営計画で高炉を15基から10基に減らして生産能力を削減したことなどから収益力が向上した。新しい経営計画では生産能力を維持して、コスト競争力の強化や、自動車1台分の車体部品を提案する「総合的ソリューション」の展開を本格化する。
海外は、買収したUSスチールの製鉄所がある米国と欧州、インド、タイを重点地域として鉄源一貫生産体制を強化する。
中期計画の26~30年度までの5年間に総額6兆円を投資する計画。海外に重点投資する方針で、USスチールの生産能力増強などの投資110億ドルを含めた合計4兆円程度が海外となる。日鉄が国内を上回る規模の投資を海外に充てるのは初めて。
国内の自動車向け薄板は、君津、名古屋、八幡で集中生産する体制を整えていくとともに、次世代熱延設備を導入するなどしてコスト競争力の強化を図る。また、電動車向け電磁鋼板については、瀬戸内製鉄所の広畑、阪神、九州製鉄所・八幡に集約するとともに、電磁鋼板の生産能力を増強する方針だ。
海外では、自動車向け需要の拡大が見込まれるインドで生産能力を増強していく。ハジラ製鉄所の生産能力を26年に600万トン増強して年間1500万トンに引き上げるとともに、ラジェヤペタに鉄源一貫生産する拠点の土地を確保した。需要に合わせて生産能力を引き上げていく。
米国は、USスチールに日鉄の最先端技術と経営リソースを投入するとともに、生産能力増強や、熱延設備の更新などを推進して収益力を強化する。30年度までに投資効果として30億ドルを見込んでいる。
鉄鋼メーカーは過剰生産の中国からの輸出される鋼材によって、経営環境は厳しい状況が続いている。日鉄は現行の経営計画中に生産能力の削減や、主要納入先である自動車メーカー向け鋼材のマージン改善を徹底してきたことで収益力を回復してきた。次期経営改革では、米国やインドなどの海外に重点投資して事業を拡大し、目標としているグローバル粗鋼生産1億トン以上の達成につなげていく。
















