TK自動車(竹内勝弘社長、宮城県東松島市)は主に輸入車の整備を通じて個人のユーザーや同業者などからの「車をしっかり直して欲しい」というニーズに応えている。入庫した車の不具合は、原因の根幹となる部分まで踏み込んで調べ、顧客に対してエビデンスに基づいた説明、整備の提案を行う。そのために必要な設備投資や社員教育を行い、新しい技術への対応にも余念がない。
ボッシュからの新鮮な情報がBCS加入の決め手に
TK自動車は1958年に宮城県石巻市で創業し、86年に現在の所在地に移転した。もともとアメリカ車や欧州車といった輸入車を扱う機会が多かったものの、当時は輸入車の修理に必要な情報は限られていた。オシロスコープで車の状態を把握して「来た車を直す」(竹内社長)ことで、自然と輸入車の入庫が増えていった。並行して、先進的な地域の同業者が集うメカトロクラブ仙台で最新の技術を研究してきた。
しかし、11年3月の東日本大震災で設備などがすべて流出してしまった。そこから会社を立て直し、13年2月に世界最大級の独立系整備工場ネットワークである「ボッシュカーサービス(BCS)」に加入した。サプライヤーの「新鮮なデータが手に入る」(同)ことから、BCSへの移行を決めた。
竹内社長が車の修理を行う際に重視するのは、車や部品に関する正しい情報だ。「サプライヤーが提供するデータが一番正しい」という結論に至り、加入後はボッシュからの最新の情報を常にチェックし、活用している。
原因の根幹を突き止めるにはきちんとした診断が不可欠
BCSに加入したことで、ボッシュの故障診断機で効率的かつ正確に車両状態を把握できるようになった。竹内社長は、このことをBCSに加入して良かったことの一つに挙げる。また、ボッシュの故障診断機にはデータを記録する機能が早くから備わっており、それが顧客に診断した結果を説明する時に便利だったと振り返る。
修理をする際には、単に原因を特定するのではなく、その原因の根幹を突き止めて必要な整備を提案する。顧客には測定したデータを基に不具合の原因とその根拠を説明する。部品を交換する場合は、その理由も伝えて納得してもらった上で作業を行う。
現在、同社には4人のメカニックがいる。このうち2人はボッシュが認定する「ボッシュシステムテクニシャン」の資格を持つ。同資格を取得するには3日間の講習を計5回受講し、テストに合格しなければならない。それでも竹内社長は、「社員のポテンシャルを引き上げる」講習には積極的に参加させるようにしている。
また、必要に応じてメカニックにはディーゼルエンジンなど専門的な内容の講座も受講させる。ボッシュにはさまざまな講座が設定されており、竹内社長は「教育を受けたい人には、ボッシュのシステムは最適だ」とする。
技術の進化についていくため知識や技術は常に更新
メカニックが学ぶための投資を惜しまないのは、「知識や技術は常に更新しないと、いずれついていけなくなる」(竹内社長)からだ。今後、整備業界で重要性が増すエーミング(機能校正)や自動運転の技術に対して、同社は「ボッシュADASエキスパート」にいち早く参画して準備をすでに整えている。
同社の入庫台数のおよそ半分は周囲の整備事業者やディーラーなどからだ。BCSに加入しているため、同業者からの修理の依頼が絶えることはない。竹内社長自身、BCSの看板を掲げていることへの効果を実感している。
TK自動車では修理の前に故障診断を行うと、「システム診断料」を30年前から必ず請求している。診断料を請求するのは、不具合の原因を突き止め、修理や部品交換を必要な箇所にだけ行うためには、きちんとした診断が不可欠だからだ。竹内社長は「診断料をもらえない車は整備しない」と言い切る。
また、整備事業者は最新の車に対応する設備投資や待遇改善など、喫緊の課題が山積している。その原資を確保するために竹内社長はレイバーレートの見直しの必要性にも言及する。「今までの料金ではやっていけない状態になっている」と指摘する。
TK自動車を創業した竹内嘉紀会長は、「規模が大きい事業者に勝てるのは技術力しかない」として技術を追い求めた。2代目の竹内社長も基本を前提に、最新の技術への対応を進める。目指すのは「規模が小さくても、どんな車でも直せるようにすること」(竹内社長)。そのためのベースを、ボッシュのネットワークが支えている。
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ボッシュのワークショップネットワークとは
ボッシュが展開する「ワークショップネットワーク」は、受けられるサービスやサポートによって大きく三つに分けられる。
「ボッシュモビリティパートナー(BMP)」は、ネットワークの入門編という位置付けだ。ボッシュ製品の情報やオンラインセミナーなどを行うポータルサイトにアクセスできるほか、ボッシュの部品販売に向けたサポートが受けられる。
「ボッシュダイアグノスティックオーソライズドショップ(BDA)」は、ボッシュのスキャンツール「KTS」を使用する故障診断や車両整備に特化したワークショップ。BMPのサポートに加えてボッシュホームページに店舗の情報を掲載できる。
ネットワークの最上位に位置するのが、「ボッシュカーサービス(BCS)」だ。世界約150カ国に1万件以上の整備事業者で構成され、高い技術力を養成、維持するためのトレーニングや整備機器に加え、定期的な監査と支援により高品質なサービスを継続して提供できるようにする。










