日本特殊陶業、「逆張り」経営で攻勢 デンソーの点火プラグ事業を譲受 「残存者利益」をポートフォリオ転換の原資に

  • 自動車部品・素材・サプライヤー
  • 2023年7月28日 05:00

 電動車シフトが進むなか、日本特殊陶業が〝逆張り経営〟に出ている。世界シェア首位の点火プラグで、デンソーから同事業を譲り受ける協議に入った。独禁当局などの審査を経て譲渡が決まった場合、世界規模で点火プラグの生産・販売体制を最適化し、収益体質の強化と供給責任の両立を目指す。稼いだ「残存者利益」は、非内燃機関事業へとポートフォリオを転換する原資に充てる。

 同社の事業譲受について、尾堂真一会長は「数年前から(事業統合の可能性について)発言してきた」と語る。同社が本社を構える中部地域の部品メーカーからは「ある程度は予想していた」という声がある一方、「トヨタ自動車系のデンソーからトヨタ系以外の日本特殊陶業への譲渡には驚いた」と驚きの声も聞かれる。同社と取引がある部品メーカーの幹部は、統合によるシェア上昇で受注増につながると期待する一方で「競合との価格競争や、生産拠点等の統廃合による影響は懸念材料だ」と話す。

 川合尊社長は「今後も内燃機関の自動車は市場にしばらく存在する一方で、全体として数は減っていく」と述べ、これまでに築き上げた生産・販売体制を前倒しで最適化する必要性に触れた。ただ、これまでのように生産量が右肩上がりならともかく、減少に向かう中で供給責任を果たしながら利益も確保していくのは別の難しさもある。

 こうしたなか、同社はデンソーの点火プラグ事業と排ガス用酸素センサーに関わる事業を得ることで取引先と数量を維持しつつ、生産・販売体制を最適化していく道を選択した。安定した収益を稼ぐ間に事業ポートフォリオを転換させていく狙いもある。

 欧州連合(EU)が2035年以降も合成燃料を用いる内燃機関車の販売を容認したり、G7サミット(先進7カ国首脳会議)で脱炭素に「多様な道筋」が明記されるなど、電気自動車(EV)一辺倒からの揺り戻しが近い将来、起きる可能性もある。「すり合わせ」のノウハウが要る内燃機関事業は、設備や開発・技能系の人材をいったん手放すと、時間の経過とともに再参入は難しくなる。

 早めに見切りをつけ、供給責任を果たすために事業譲渡先を探すか、それとも日本特殊陶業のように買う側にまわるか。電動車シフトが進むに連れて、部品メーカー各社は難しい選択を迫られそうだ。

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