自社開発している電動トゥクトゥク
トゥクトゥクならではの旅行体験で利用者が増加

タイの移動手段として有名なトゥクトゥクが、日本の観光地でも移動手段として利用が広がっている。スタートアップ企業のeMoBi(えもび、石川達基社長、東京都中央区)は、観光地での電動トゥクトゥクのレンタルサービスなどを展開する。バスの本数が少ない、レンタカーが足りないといった観光地の移動課題を解決するとともに、トゥクトゥクを生かした移動体験を提供し、利用者数を拡大していく考えだ。

同社は、神奈川県鎌倉市や沖縄県などの観光地での電動トゥクトゥクの貸し出しに加えて、観光地までの「一次交通」と、観光地での移動の「二次交通」のパッケージも提供している。電動トゥクトゥクのレンタル費用は場所によるが、鎌倉/通常プランでは、4時間で1万2千円(現在は1周年記念キャンペーンで4千円)。レンタル事業を2021年に展開して以降、累計1千人以上が利用しているという。「車よりも(速度が)ゆっくりで景色が楽しめる」(後藤詩門取締役COO)ことや、小回りが利き運転しやすいことなどで若い世代を中心に利用者が増えている。

後藤COOは観光地での移動課題について「(観光地までは)鉄道などで来れるが、観光地で複数のスポットを回るには公共交通機関だけでは(回りきるのは)難しい。一次交通後の移動に課題がある」と話す。東京では、JR東日本スタートアップ(柴田裕社長、東京都港区)と連携し、JR青梅線の鳩ノ巣駅に無人で電動トゥクトゥクを貸し出す実証を23年10月に実施した。

使用する車両は自社開発で、生産は中国企業に委託している。航続距離45kmと80kmの2種類。充電時間は6~7時間で、最高速度は時速50kmだ。トゥクトゥクはトライク(三輪車)と同じく「側車付軽二輪」(排気量50cc以上250cc未満)に分類され、普通自動車免許で運転できる。ヘルメットの着用は不要という。車検の必要がなく、維持費も排気量250cc以下のバイクと同等のため、コストを安く抑えられるメリットがある。

車両の機能拡大も検討していく。例えば、鎌倉では人気漫画でアニメや映画化された「スラムダンク」の聖地がある。車両の位置情報を活用し、目的地近くになれば、スラムダンクのオープニング曲を流すなど「いかに楽しく(旅を)演出できるか」(同)で、印象に残る思い出づくりに貢献していく。国内だけではなく、インバウンド(訪日外国人)向けのサービスも考案する。東京郊外への日帰り旅行客と沖縄本島の宿泊客向けへのサービスを強化し、移動課題だけでなく、旅行体験も提供することで、利用者を増やしていく。

(藤原 稔里)