4月下旬に開業した「アウディチャージングハブ紀尾井町」。最大4台が同時に充電可能
「CHAdeMO(チャデモ)」の充電規格に対応

フォルクスワーゲングループジャパン(VGJ、マティアス・シェーパース社長、愛知県豊橋市)は、最大出力150kWの電気自動車(EV)向け急速充電ステーションを東京都千代田区に開設した。アウディブランドとして欧州以外では初の急速充電ステーションだが、アウディ以外のEVも利用可能という。EVユーザーが注目する高出力タイプの急速充電器をホテルやオフィスビルが立ち並ぶ都市部に設置することで、既納客の利便性を高めるとともに、他銘柄のEVユーザーとの接点にも活用していく。

今回開設した充電ステーションは「アウディチャージングハブ紀尾井町」。24時間使用可能で4月26日から運用を開始した。アウディは販売店以外での充電網の構築を各国で進めており、アウディチャージングハブはこれまで欧州で6カ所設置している。国内のアウディ部門を統括するシェーパース社長は「EVシフトは今後も加速する。日本市場でEVを普及させていくための象徴的な施設だ」と語る。

とはいえ、同施設のすぐそばにはアウディの正規販売店があり、充電の待ち時間にも気軽に立ち寄れる。アウディ以外のEVも利用可能とすることで、他銘柄ユーザーを呼び込むフックとして期待する。

同施設には2口タイプの急速充電器を2基配置。最大4台の同時充電が可能だ。アウディチャージングハブの急速充電器は最大出力150kWの性能を持つため、例えばアウディ「Q8イートロン」の場合、8.5分で走行距離100km分を充電できるという。経済産業省が2023年夏に公表した資料によると急速充電器は全国で約9千口あるが、その大半が出力50kW未満で、平均出力は40kW。150kWという高出力は、特に電池容量の大きなEVには重宝されそうだ。

日本自動車輸入組合(JAIA、上野金太郎理事長)によると、23年度の外国メーカー車の販売台数(24万4844台)に占めるEVの割合は同3.0ポイント増の9.7%だった。EVの存在感が着々と高まる中、24年度から新しくなった政府の「クリーンエネルギー自動車(CEV)補助金制度」では、自動車メーカーによる充電インフラの整備状況なども補助額の評価基準となった。自国の販売ネットワークを構える日本メーカーに比べて、設備投資が限られる海外メーカーには不利な状況ともいえる。

VGJは25年に国内2カ所目となるアウディチャージングハブを東京都港区に開設する計画。紀尾井町についてもサービスの充実を図り、ウェブを通じて充電スペースを予約できる機能を導入する予定だ。シェーパース社長は「EVの普及に向けた施策を戦略的に継続する」と力を込める。

EVの難点である充電問題に効果を発揮する高出力充電器だが、同時に導入や運用面のコスト高に伴う採算性といった課題も抱えている。さらなるEVの販売拡大に合わせて、高出力の充電ネットワークも整備が進むのか注目される。

(舩山 知彦)