左から山内副社長COO、田中社長CEO、伊藤忠の真木執行役員
伊藤忠本社で開いた会見

自動車保険金の不正請求問題を起こした旧ビッグモーターの事業を引き継ぐ新会社「WECARS」(ウィーカーズ、東京都千代田区)が5月1日付で発足した。伊藤忠商事は同日、都内の本社で会見し、社長CEO(最高経営責任者)に同社元執行役員の田中慎二郎氏(61)が就任すると発表。旧ビッグモーターの買収を決めた伊藤忠商事、伊藤忠エネクス、再生ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP、佐藤雅典社長、東京都千代田区)の3社連合の出資金額が約400億円であることも明らかにした。

新会社の副社長COO(最高執行責任者)には、伊藤忠執行役員の山内務氏(57)が就任するほか、社外取締役に前消費者庁長官の伊藤明子氏(62)が就く。伊藤氏は国土交通省出身で現在は伊藤忠やキヤノンの社外取締役を務めている。

新会社は全国の約250店舗と約4200人の社員を引き継ぐ。伊藤忠からも50人以上が新会社に入り、再建を目指す。今後はグループからさらに出向者を増やすという。

一方、会社分割で旧会社(存続会社)となった旧ビッグモーターは社名を「BALM」(東京都多摩市)に変更した。創業家の資産管理会社が持つ株式はすべてJWP側に譲渡された。訴訟や借入金の返済、損害保険会社への不正請求の対応などを行っていく。旧ビッグモーターの和泉伸二社長が社長を継続する。

1日の会見には、田中社長CEOと山内副社長COOのほか、伊藤忠の真木正寿執行役員など4人が出席した。

2023年7月に旧ビッグモーターで不祥事が発覚し、本業の中古車販売は不祥事前の1~2割の水準まで落ち込んだが、足元では3~4割程度に戻ってきているという。また、中古車の買取台数も約半分から8割近くまで回復した。田中社長CEOは「看板は当面ビッグモーターのままだが、ぜひご来店いただきたい」と新会社をアピールする。

ただ、社内の不祥事は昨年7月の発覚以降も起きている。伊藤忠の真木執行役員は「今後ウィーカーズが成長していくためには、コンプライアンス(法令順守)を最重要視する組織に変えていく必要がある」と説明する。

また、旧ビッグモーターは23年12月1日に損害保険代理店の登録取消処分を金融庁から受けた。2年間は再登録できず、中古車販売の大きな課題になっている。これについて山内副社長COOは「ワンストップサービスとはいかないが、(伊藤忠子会社の)『ほけんの窓口グループ』を顧客に紹介していきたい」という。真木執行役員も「もともと中古車トップ。早くナンバーワンに復帰してほしい」と新会社に対する期待を語った。

(2024/5/1更新)