EV向けに小型化した最新のSiCパワー半導体モジュール

 三菱電機は、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)や循環型経済の実現に寄与する領域に2024年度から30年度までの7年間で約9千億円を投資する。電気自動車(EV)向けの炭化ケイ素(SiC)パワー半導体やエネルギー管理技術などの開発を強化する。自社拠点で使う電力も30年度までに再生可能エネルギーや非化石電力に切り替え、成長と社会課題の解決を同時に目指す。

 同社は、研究開発に21年度から25年度までの5年間で約1兆1千億円の投資を進めている。このうち過半数は脱炭素化や循環型経済に役立つ領域だ。26年度以降も積極的な投資を続けていく。

 モビリティの電動化に欠かせないパワー半導体領域にも重点投資する。EV向けに小型化した最新のSiCパワー半導体モジュールは3月からサンプル出荷を始めた。量産に向け完成度を高めていく。半導体装置メーカー、米コヒレントと技術協力して8㌅の大口径ウエハを効率的に製造していくほか、より高耐圧な酸化ガリウム系デバイスの開発にも取り組む。

 再エネなどのエネルギー管理サービスも強化していく。同社は3月から、電力エリアの異なる兵庫県、広島県、香川県の拠点をつなぎ、再エネを自己託送(たくそう)して蓄電する実証を始めている。集めた需給データを脱炭素化に寄与するサービスにつなげていく。

 30年度までに「100%クリーンエネルギー化」を目指す。自動車機器事業は、4月から「三菱電機モビリティ」へ分社化する予定だが、同事業会社の拠点も対象とする。30年度にはスコープ1(自社排出)、2(間接排出)、50年度にはスコープ3(サプライチェーン全体での排出)を含めたカーボンニュートラル化に取り組む。

 女性管理職の比率を現状の2・6%から30年度に12%に高めるなど、人材基盤の強化にも取り組む。漆間啓社長CEO(最高執行責任者)は「社会課題の解決と事業を両立させた『トレードオン』を実現したい。データから新たな価値を作り、循環型経済を目指す」と語った。