輸入車首位の「Tロック」
EVもSUVがけん引
オフロード車の需要も底堅い
アウトドア人気も追い風に

 輸入車市場で、SUVの存在感が増している。日本自動車輸入組合(JAIA、上野金太郎理事長)がまとめた2023年度の車名別販売台数の上位20車種をみると、11車種がSUVとなり、年度として初めて半数を占めた。輸入車市場全体が5年連続で前年を割り込む中でも、SUVは人気で大幅に前年実績を上回るモデルも目立つ。24年度も主力モデルの全面改良を控えるほか、電気自動車(EV)タイプを国内導入する動きもあり、SUVの品ぞろえは拡充される。ユーザーの根強いSUV人気も後押しし、今後もシェアが拡大しそうだ。

 22年度販売実績に比べて、高い伸び率を示した輸入SUVはメルセデス・ベンツ「GLC」で、23年度は前年実績の2・5倍になった。同モデルは23年3月に、7年ぶりに全面改良。その新車効果が23年度、通期で効いたことが大きかったとみられる。前年から6割近く販売台数を増やしたBMW「X1」も、23年2月の全面改良をきっかけに勢いが増した格好だ。

 輸入SUVの首位(総合4位)は、20年に発売したフォルクスワーゲン(VW)「Tロック」だった。同年に国内投入されたメルセデス・ベンツ「GLB」も、輸入SUVで2位(総合5位)につける。価格や車体はGLBがやや上に位置するものの、パワートレインは、ほぼ同様のラインアップ。大きすぎない使い勝手の良いサイズ感も支持されたとみられる。両モデルは新型車として発売したため、保有母体がなかった。安定した代替が見込めない中で、高水準の販売を続けていることもSUV人気の高さを裏付ける。

 輸入車市場の主流となったSUVだが、総合順位のトップ3に入ったことは一度しかない。年度の車名別総合順位が確認できる06年度以降では、20年度にVW「Tクロス」が3位に入ったのみだ。セダンやコンパクト車など輸入車の定番モデルの牙城を崩すまでには至っていないのが実情だ。

 ただ、近い将来、このハードルを越える可能性も高まっている。24年度は輸入SUVで上位に付けるTクロスが大幅改良する予定。VWでは「ティグアン」も全面改良する計画だ。他のブランド勢もSUVを軸に、商品計画を進めるところが多そうだ。EVなど次世代車でも新たなSUVが増えるとみられる。こうした話題性のある商品の発売が相次げば、他の輸入SUVに目を向けるユーザーも出てくる。総合順位でも、さらに上位をうかがうモデルが増えそうだ。

(舩山 知彦)