金融商品のデジタル化を進める

 トヨタ自動車は、7月から新車購入時の割賦申し込みや契約などをパソコンやスマートフォンで顧客自身が行えるようにする。販売会社の生産性改善につなげるとともに、契約期間中に繰り上げ返済もできるようにして、顧客の利便性も高める。トヨタは系列販売店の資金調達をトヨタファイナンス(西利之社長、名古屋市西区)に一本化する。これを契機に金融商品のデジタル化を一気に進め、販売店のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる。

 割賦申し込みなどの手続きは今も電子ツールを使っているが、販売員が顧客に代わって入力していた。今後は商談後に確定した支払い条件などの情報を「QRコード」で提示し、その後は割賦申し込みから審査、契約までの手続きをすべて顧客が行えるようにする。本人確認を済ませることで、契約に必要な電子サインもなくす。

 まずは5月の大型連休明けに系列販社6社(13店舗)で先行導入し、7月から全国の販売店に導入していく。インターネット経由の手続きから始め、10月にはスマホの決済アプリ「トヨタウォレット」でも利用できるようにする。

 デジタル手続きの過程では、クレジットカード「TSキュービックカード」で貯まったポイントを月々の支払額に充当する「使ってバック」やクレジット一体型保険などの金融商品も自動で提案する。対面手続きでは、こうした関連商品の提案を失念したり、怠ったりする可能性もあるが、自動提案機能により機会損失を防ぐ。本人確認を怠るなどの人的ミスも防ぎ、コンプライアンス(法令順守)の強化にもなる。

 一方、顧客は契約期間中の繰り上げ返済や、ボーナス払いの有無といった支払い条件を柔軟に変えられるようになる。今後は金融商品を軸にアプリ上の他機能とも連動させ、収益機会を広げる考えだ。

 トヨタファイナンスは「モビリティサービス金融業」を掲げ、販社の事業領域を広げたり、DXを主導したりしている。同社によると、系列販売店が扱う現金や銀行振り込みの金額は年間2兆円以上にのぼる。西社長は「ようやくスタートラインに立った」と話す。今後も系列販社の金融や決済サービスを集約し、販社の生産性や顧客利便を高めていく考えだ。