○…芥川の「酒虫」という短編は、中国のある大酒飲みの大富豪が、身中に巣食っている酒虫という虫を退治してもらったところ、下戸に豹変してみるみる痩せ、商売も傾いて零落する、という話だが、諧謔(かいぎゃく)というには現実味を帯びた過ぎた話である。無駄どころか、害になると思われていた存在が、その人なり組織なりに必要なものだった、という例は古今東西、枚挙に…