中国で大ヒットしている宏光ミニEV
トーヨータイヤのエアレスタイヤを装着したゴルフカート

CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)やMaaS(サービスとしてのモビリティ)により、小型電気自動車(EV)の用途が拡大しつつある。国内では、ベンチャー企業を中心に小型EV開発は進む。ただ、若者を中心に爆発的に売れている中国とは地域性や顧客ニーズなどが異なるため、一般的な普及が進むには時間を要しそうだ。街乗り、観光地や地域での移動手段など、サプライヤーは小型EVのさまざまな可能性を探りながら、製品開発やビジネス展開を模索する。

国内タイヤメーカーでいち早くエアレスタイヤの社会実装を目指すトーヨータイヤ。エアレスタイヤ装着のターゲットとしているのが軽自動車クラスや小型のEVだ。「商機はある」(水谷保執行役員)として空気用タイヤとは全く異なる分野である小型EVにビジネスを広げていく戦略だ。

将来的には、地域の交通課題の解決やグリーンスローモビリティなどをエアレスタイヤが生かせる市場と位置付けている。まずはゴルフ場やテーマパークなどの限られた場所で活用する小型EVへの装着を狙う。

世界に先駆けて中国では新たな「生活の足」として小型EVの普及が進んでいる。低所得者層を中心に、ゼネラル・モーターズ(GM)が出資する上汽通用五菱汽車「宏光ミニEV」のような50万円以下の車が売れており、現地の自動車市場において存在感を高めている。

この小型EVブームを背景に、製品展開を積極化していくのが日本電産だ。同社は中国や欧州でEV用トラクションモーターを生産している。近く小型EV向けモーターの生産に着手する方針だ。

永守重信会長は「中国の新興EVメーカーの技術力が上がり、低価格帯のEVが普及すればグローバルで価格競争が始まる」と想定。モーター自体は低価格ではあるものの数量が多いため、小型EVを成長分野と位置づけ、中国工場などを小型EVモーター生産に切り替え生産体制を整える。

グローバルで形成されつつある小型EV市場。サプライヤーは地域ごとのニーズをくみ取りながら存在感を示せる分野の模索を始め、電動化時代の新たなビジネスの創出を図る。