日産自動車は2日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同研究中の月面ローバー試作機を公開した。日産の四輪制御技術「eフォース」やモーター制御技術を応用し、砂地でもスタックしないローバーの開発を目指す。日産はJAXAとの共同研究の成果を踏まえて制御技術を進化させ、宇宙探査技術の発展を目指すとともに、地上の砂漠などでもスタックせずに走行できる自動車の開発につなげる。

 月の表面は「レゴリス」と呼ばれる細かい砂で覆われているが、月や火星を探索するローバーが砂地でスタックして使用できない状況になる事例やスタックからの脱出で限られたエネルギーをロスしてしまうケースがあった。そこで宇宙、地上でそれぞれ砂地走破性の向上について研究していたJAXAと日産は2020年1月に「電動駆動制御による砂地走破性の向上」の共同研究を開始した。

 日産の中島敏行先行車両開発部長によると、「研究の結果、車を進める力に対し、砂地の抵抗が少ないおいしいポイントが見えてきた」という。通常はタイヤが空転すると砂地に沈下するが空転量を緻密に制御することでスタックを避ける。研究成果を反映した試作機を開発したほか、今後1年間かけて解明してきたメカニズムをベースにシミュレーション環境を構築し、ローバーへの適用を目指す。

 日産が共同研究で狙うのが地上における四輪制御技術のさらなる進化だ。これまで積雪路や濡れた路面を安定して走行できる制御技術を開発してきたが、常に路面状況が変わる砂地での制御は地上でも難しかった。

 中島氏は「最も難しい砂地をクリアできれば他のシーンでも制御の精度が上がる」としており、「アリア」に搭載するeフォースの進化を図り、将来的には誰でも砂地を走行できる技術を商品化する構想だ。