オープン戦略でEV市場に参入するホンハイのEVプラットフォーム
低価格で大ヒットしている上汽通用五菱の宏光ミニEV

 欧州委員会が環境対策政策パッケージ「フィット・フォー55」の乗用車と小型商用車の二酸化炭素(CO2)排出基準を改正し、2035年以降、すべての新車をゼロエミッション車とする改正案をまとめた。実現すれば35年以降、ハイブリッド車(HV)を含めて内燃機関を搭載する新車の域内での販売が禁止される。地元・欧州の自動車メーカーは改正案に反対しつつも、一部は規制に先行する形で電気自動車(EV)専業化を打ち出している。対照的に日系自動車メーカーでゼロエミッション車を明確に打ち出しているのはホンダだけだ。

欧米メーカーが相次ぎEV専業計画

 新しい規制案では、30年までに新車のCO2排出量を21年と比べて55%削減する中間目標が設定されている。この厳しい基準を達成するのにHVなどの低燃費車だけで達成するのは不可能。自動車メーカー各社は域内で電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)といったゼロエミッション車の販売を増やすことを迫られる。

 内燃機関車を排除する規制は、欧州委員会の規制案が公表される以前から、欧州の一部の国や米国カリフォルニア州などの一部地域で先行している。英国政府は30年にガソリン車、ディーゼル車の新車販売を禁止し、ハイブリッド車も35年までに禁止することを表明。カリフォルニア州知事は35年までに新車のすべてをゼロエミッション車とする知事令を発している。

 欧米自動車メーカーの一部は、こうした動きに迅速に対応、内燃機関から撤退してEV専業となる計画を相次いで公表している。フォルクスワーゲン(VW)グループのアウディは26年以降の新車をEVに絞る方針を表明。ジャガーは25年から、BMWグループの「ミニ」ブランドは30年代初頭にそれぞれEV専門ブランドとする。メルセデス・ベンツとボルボ・カーはともに30年にEV専業化する。

 欧州自動車メーカーだけではない。米国メーカーでもゼネラル・モーターズ(GM)が35年にEV専業化する方針を決めており、EVや車載用電池の開発・生産体制を拡充している。フォード・モーターは30年に環境規制が厳しい欧州市場向け乗用車のすべてをEVにする計画だ。

 先進国の自動車メーカーでは日系がEV化で出遅れていたが、欧米のEV専業化によってさらに後退した感もある。現在、日系でゼロエミッション車専業化を明確に打ち出しているのは40年に販売する車両をすべてEVとFCVにすると表明したホンダだけ。10年以上前に世界初の量産型EVを市場投入した日産自動車は、30年代初頭に主要市場で販売する新車をすべて電動車とする計画を公表しているだけでEV専業化は明言していない。日産は市場での評価の高いシリーズ式ハイブリッドシステムである「eパワー」をフル活用するためとみられる。日産とアライアンスを組んでいるせいかは不明だが、ルノーは欧州が主力市場でありながら30年までにルノーブランド車のEV比率を9割にする計画にとどめている。

 日本メーカーの中で唯一、EV専業化を打ち出したホンダの三部敏宏社長は「欧米の自動車メーカーから見れば普通のこと。(EVシフトでは)出遅れ感を持っており、これ以上遅らせると取り戻せなくなる」との危機感を持つ。