EV「ID.3」の生産風景

 フォルクスワーゲン(VW)は、欧州を代表するドイツの自動車メーカーです。VWグループの2020年の世界販売台数は930万台で、5年ぶりにトヨタ自動車に抜かれ2位に落ちました。

 国有企業として1937年に創業し、第二次世界大戦後に民営化されました。もともとはその社名通り「国民車」(大衆車)のメーカーでした。1938年に生産を開始した「タイプ1」は「ビートル」の愛称で親しまれたリアエンジン車です。改良を続けながら世界中に輸出され、戦後の西ドイツ(当時)の復興をけん引しました。ドイツ以外の国でも生産されており、2003年にメキシコで生産終了するまで累計2150万台が市場に送り出されました。

 その後は「ゴルフ」や「ポロ」に代表される数々のヒット車を生み出しました。

 VWグループには、ポルシェやアウディ、ベントレーなどのスポーツカーや高級車、大衆車のセアト、シュコダ、商用車メーカーのトレイトンといった10社を超えるブランドが名を連ねます。

 2015年には同社のディーゼルエンジン(DE)車の〝排ガス不正〟が発覚しました。コストを抑えるため車両に不正なソフトを組み込み、排出ガス中の有害物質が規制値を上回っても検査をクリアできるようにしたものです。これを機に他社の不正も相次ぎ発覚し、二酸化炭素(CO2)削減の優等生とされてきたDE車の評判を台無しにする事態を招きました。

 この事件が発端となり、欧州で電動化の動きが加速することになりました。VWは電気自動車(EV)の開発に積極的に取り組み、電動化の流れをリードしています。EVシリーズ「ID.」の第一弾となったコンパクト車「ID.3」などのEV販売台数は、20年に前年の3倍に伸びました。今年3月には、同シリーズ2車種目のSUV「ID.4」の販売を開始しました。同社は25年にEVの年産150万台体制を整える計画で、EVで先行し世界シェア拡大を目指します。