佐川の本村正秀社長(左)と、ASFの飯塚裕恭社長

 SGホールディングスグループの佐川急便は13日、開発中の軽電気自動車(EV)の試作車を初公開した。EVベンチャーのASF(飯塚裕恭社長、東京都港区)と共同開発していた車両で、細い道が多い住宅地などでの利用を見込んでいる。今年9月にも量産を始める予定。車両生産には約1年かかるため、佐川急便の営業所には来年9月から納車される予定。佐川急便は2030年までに集配用として使う約7200台の軽自動車をすべてEVに切り替える計画だ。

 1充電当たりの航続距離は200キロメートル以上を実現した。システム設計などはASF、車両生産は中国の五菱汽車が担当する。車両メンテナンスはグループ会社で整備事業を手がけるSGモータースが行う。

 試作車は「ドライバーが使いやすく、IoTデバイスが荷物を運ぶという2つのコンセプトで開発した」(佐川急便の本村正秀社長)のが特徴。運転席は助手席より広く設定し、車内作業を効率的に行えるテーブルや1リットル紙パックが置ける収納なども設けた。

 荷室では4本のLEDライトを設置して夜間集配時の利便性を高めたほか、荷台は高くしタイヤハウスの凹凸もなくすなど、配送員への負担を減らす工夫も凝らした。

 ITも活用する。車両情報や運行データをクラウド上で管理するシステムを取り入れ、運行記録計なども装備する方針だ。

 佐川は昨年6月、ASFと小型EVの共同開発で合意した。当時「自動車メーカーからオールマイティーな車両は出ていたが宅配便に特化した車はなかった」(佐川急便)ことを背景に、宅配事業者自らがEVベンチャーと共同開発することにした経緯がある。

 佐川は集配用軽自動車をEV化することで、同社が保有する約2万7千台の車両が排出する二酸化炭素(CO2)の約1割に当たる約2万8千トンを削減する方針だ。