左から全樹脂電池セル、樹脂集電体

 三洋化成工業と子会社のAPB(堀江英明社長、東京都千代田区)は9日、グンゼの協力を得て、全樹脂電池を世界で初めて量産すると発表した。今年10月にAPBが福井県武生市に新設する工場で定置用やモビリティ向けに生産開始する予定。2025年以降、電気自動車(EV)市場向けに参入する予定。

 全樹脂電池は活物質に樹脂を被覆し、樹脂集電体に塗布して電極を形成する。片面に正極活物質層、もう片面に負極活物質層を形成して、シート状のセルを積み重ねる。樹脂製のため、短絡しても発火や爆発するおそれがなく、安全性が高い。グンゼの導電フィルムや積層フィルム技術をベースにした電気を取り出す樹脂集電体の開発によって量産化の目処が立った。

 開発した全樹脂電池にはJFEケミカルのハードカーボンや、帝人のカーボンナノファイバーなど、APBに出資した企業の材料を活用する。

 グンゼは全樹脂電池を量産する10月に合わせて、プラスチックフィルムを製造する守山工場(滋賀県守山市)で樹脂集電体を生産する。

 全樹脂電池は当面、定置用や、自律型無人潜水機などのモビリティ向けで実用化する。需要が見込まれるEV向けは、価格競争が激しいことから、25年以降に実用化する方針。EV向けを事業化する場合、福井県内に工場を増設する見通し。