写真提供:コンチネンタル
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 「コネクテッドカー元年」ー。自動車関連メーカー各社がコネクテッドサービスを相次いで本格化している。クルマがインターネットや他のモビリティ、交通インフラなどの外部とつながることで、運転の利便性や安全性の向上を図ることができるだけではない。購入後のクルマに新しい機能が追加されたり、走り回るクルマから収集するデータを使った新しいサービスを実現できる可能性が広がる。クルマが単なる移動体から“走るスマホ(スマートフォン)”となる日がやってきた。

遠隔操作で航続距離延長

 米テスラの電気自動車(EV)は、欧米市場で昨年春から順次、先進運転支援システム「オートパイロット」に新たな機能を追加した。新車だけでなく、ユーザーの手に渡った既存のEVもシステムを起動すると、信号機と一時停止の標識を認識して、自動で停止するようになった。テスラが無線通信を使って対象となるテスラ車のソフトウエアを遠隔でアップデートしたことで実現した。2017年9月には、米国でハリケーンが襲来する地域にあるテスラのEVに搭載しているソフトを遠隔で書き換え、航続距離を一時的に約50キロメートル伸ばした。

 テスラのEVには、センサー類など、さまざまなハードウエアが用意されており、無線を使ってソフトをアップデートすることで、ユーザーが販売店やサービス工場などに出向かなくても、車両の性能向上を図ったり、新しい機能を追加することができる。

 自動車は従来、新車購入時が最高のパフォーマンスで、時が経つにつれて機能が古くなったり、性能が劣化していく。それがコネクテッドカーでは、スマホのように、購入後もソフトをアップデートすることで性能が向上する。コネクテッドカーはクルマに対する従来の価値観を抜本的に変える可能性を秘めている。

 日系自動車メーカー各社でも、つながるクルマのサービスを本格化している。国内で先陣を切ったのはトヨタ自動車で、18年6月に「クラウン」と「カローラスポーツ」の新型車でコネクテッドサービス「Tーコネクト」を開始し、これ以降のほぼすべての新型車で対応している。ホンダでは昨年2月に発売した新型「フィット」に通信端末「ホンダコネクト」を搭載し、コネクテッドサービスを開始した。車載通信端末やスマホのブルートゥース機能を使って、「マツダコネクト」「スバルスターリンク」「ミツビシコネクト」などのコネクテッドサービスが昨年から相次いで展開されている。

 コネクテッドカーで実現する機能やサービスは多岐にわたる。ナビゲーションシステムは最新の地図情報に更新できる。交通事故によるエアバッグ展開を検知すると、車両位置情報を含めて自動通報してくれる。車両の遠隔監視や盗難車の追跡、リアルタイムの交通情報を活用した目的地までのスムーズなルート案内にも役立つ。遠隔でのエンジン始動や自動駐車なども実現できる。

 つながる技術のメリットは、これらユーザーの利便性や安全性の向上にとどまらない。販売店やサービス工場、メーカーにとっても有益だ。自動車メーカーは、コネクテッドカーを、車両ごとのコンディション把握に活用している。ECU(電子制御ユニット)などのデータを自動車メーカーが構築するデータセンターに送信することで、車両の状態を個別に把握。不具合の予兆を検知すると、車両のディスプレーなどに、販売店への入庫案内を送信する。緊急度合いに応じて、故障で路上に停止してしまう前に案内することが可能となる。