三洋化成工業は、全樹脂電池を製造・販売する子会社のAPB(堀江英明代表取締役、東京都千代田区)に追加出資すると発表した。出資額は7億円。APBは、年内までに100億円の資金調達を目標としており、これまで三洋化成や豊田通商、帝人などから出資を受け89億円の資金を調達していた。今回、残り11億円を三洋化成と新東工業、三菱UFJキャピタル7号投資事業有限責任組合による第三者割当増資で、目標額の100億円に到達した。資金は全樹脂電池の生産拠点であるAPB福井センター武生工場(福井県越前市)での量産体制の確立に活用する。

 同工場は2021年秋に全樹脂電池の生産を開始する。新東工業と共同で自動化生産設備を開発し、同年12月には生産設備を含む量産技術を確立する。

 21年以降をフェーズ1と位置付け、特殊用途向けに製品展開していく。25年には売上高900億円を見込む。三洋化成の安藤孝夫社長は「まずは全樹脂電池にしかできないニッチな領域で事業基盤を作る」と強調する。25年以降はフェーズ2として、約1000億円を投じてボリュームゾーンにあたる電気自動車(EV)や電力網市場などにも展開していく方針を掲げる。福井県内にマザー工場を新設して量産化を加速する。

 フェーズ3にあたる30年以降は約1兆円を投資し、マザー工場と同規模の工場を国内外に展開する。工場を運営するオーナーを募り、APBは技術を提供する考えで、年間生産500ギガワット時以上を目指す。