新型「ミライ」の水素充填口などに使われている

 愛知製鋼は10日、従来品と比べコストが約1割安く、切削性も向上させた高圧水素用ステンレス鋼がトヨタ自動車の燃料電池車(FCV)、新型「MIRAI(ミライ)」に採用されたと発表した。従来の2鋼種と合わせ、自動車メーカーや水素関連産業に売り込んでいく考えだ。

 水素原子は、金属の中に入り込んで脆(もろ)くさせる「水素脆化」という現象を起こす。愛知製鋼は、レアメタルの一種であるモリブデンを添加し、脆化しにくくしたステンレス鋼を2013年に開発し、水素ステーション(ST)部品用として供給したのを皮切りに、14年には初代「ミライ」向けに強度を高めた鋼材も供給してきた。こうした鋼材は、充填ノズルや手動弁など、高圧下で作動する部品に使われる。

 今回開発した高圧水素用ステンレス鋼「AUS305-H2」は、モリブデンを炭素に置き換え、硫黄を添加するなどして、従来と同等の耐水素脆化性と強度を保ったまま、鋼材のコストを約1割引き下げ、切削性も向上させた。加工が容易になるため、自動車メーカーや部品メーカー側のコストも減るという。

 同社のステンレス鋼全体に占める高圧水素用鋼材の比率はまだわずかだが、同社では「水素社会の発展に伴い、鋼材の売り上げが伸びることを期待している」と話した。