東芝は、定置用に電解液に可燃物を含まない水系リチウムイオン二次電池を開発した。電解液には低温でも凍らない水溶液を使用し、世界で初めてマイナス30度での運用も可能にした。水溶液は不燃性のため、消防法の危険物の対象にはならない。外部要因で火災が起きた時でも安全性を確保でき、設置場所の自由度も高まる。水溶液が安価な上、電池の外装缶や安全装置、設置時の安全対策も簡略化でき、製造設備や蓄電池システム全体の低コスト化が期待できる。2020年代中の実用化を目指す。

 水系電池は、長期間の運用で水溶液の電気分解反応が進行し、充放電反応が進まないことが課題だった。同社は、リチウム塩の濃度が高い高濃度電解液と固体電解質セパレーターを組み合わせた電池構造とすることで、正極側から負極側への水素イオン(水)の移動を防いで水溶液の電気分解を抑制。従来技術に比べ10倍の約2千回以上の充放電を可能にした。また、水系電池としては高い2・4㌾の電圧を達成した。

 将来的には車載電池への適用も視野に入れる。現状はエネルギー密度が他の車載電池に比べて低く、電気自動車などの航続距離を稼げない。今後、研究開発を進めることで、車載用途にも適用していきたい考えだ。